ルービンシュタイン国際ピアノコンクール ガラ・コンサート

昨年5月にイスラエルのテル・アビブで行われたルービンシュタイン国際ピアノコンクール。
今はちょうど、前々回優勝のガヴリリュクが来日中ですね!
第14回は、ウクライナのアントニ・バリシェフスキーさんが優勝に輝き、
また、その他にも今後注目したい若手ピアニストと出会えるコンクールでした。

コンクールが終わって間もなく、
イスラエルではパレスチナの紛争激化などもあり、一時はどうなることかと思いましたが、
8月の終わりには停戦合意があり、今は表面上、再び静かな状態になっているようですね。
ドイツ人のジャーナリストが9月の休暇でテル・アビブに行ったそうですが、
その時点でもう、「すごく静かで普段通りの感じだった」とのこと。
この地域に詳しい方が「何年か毎にこういう紛争が起きているんだし…」と言っていましたが、
確かに思い返してみればその通り。
現地の人にとっては珍しいことではないのかもしれません。
そして国際社会の関心も、次に何かあるまでまた薄らいでしまうという。

さて、話を本題に移して、ガラ・コンサートのご紹介です。
1月22日の浜離宮朝日ホールをスタートに全国5会場でツアーが行われます。
浜離宮と宗次ホールでは、なんと昼・夜の2回公演!
日程の詳細はこちらです。

このコンクールは、本選最終ラウンドで6人中5人がファツィオリのピアノを演奏したことも注目を集めました(詳細はこちらの現地レポートから)。
そんなわけでこのコンサートは
ファツィオリの日本総代理店ピアノフォルティによって企画されています。
よって使用ピアノはもちろんファツィオリ。
ほとんどの会場に持ち込むことになるわけですが、
聞くところによると、福井のホールにはファツィオリが常設されていて、それを使用するとか。

今回出演するのは、1位のバリシェフスキー、2位のスティーヴン・リン、
そして1次からファツィオリを弾き続けていたファイナリストのマリア・マゾ。
3人の演奏を紹介する動画はこちらです。

マゾさんの卓越したファツィオリ遣い、
スティーヴン・リンさんの驚くほど豊かな音と表情に、期待。
そして、バリシェフスキーさんの真面目な性格が滲み出ているような
やたらシブいプログラムも気になります。
プログラムBではヴァルディ審査委員長が
「今まで聴いた中で一番」とコメントしていた「展覧会の絵」も演奏されますから、
改めてじっくり聴いてみたいです。

バリシェフスキーさん、優勝後はいろいろな演奏会に招かれていると思いますが、
やはり今もまだ、一瞬フルフェイスのヘルメットに空目しそうになる
あのワイルドなヘア&ひげスタイルなのでしょうか。
そのあたりにも、要注目。

ニコライ・ホジャイノフ新春メッセージ2015

今年もまた、ニコライ・ホジャイノフさんから日本のファンのみなさんへ
新年のご挨拶のメッセージをお預かりしました。
(なぜかニコライさんの中で毎年恒例となった模様です)

My dearest Japanese fans!
I thank you for your support during the whole year, for worrying for me and taking pleasure at my concert.
Music is an invaluable gift given to people, using its language I can communicate with you, to exchange my thoughts and feelings with you. Everything I am saying to you through the musical sounds is coming from my heart, my soul. Your warmth, sincerity are very precious to me, they help me to create and to believe that my music touches your souls, your hearts, I am always very comfortable in Japan.
I wish all my fans a Happy New Year! May all of you be always accompanied by the most devoted and sincere people. I wish you happiness, may your life be full of sounds of beautiful music!
I am wishing you a strong health, smiles, warmth, comfort in your home and families!
I am eagerly waiting for our meeting in April.
With love,
Nikolay Khozyainov

例によってざっくりと内容を訳しますと…

いつも支えてくれて、またコンサートを喜んで聴いてくれて感謝していること。
音楽というのは人間に与えられたかけがえのないギフトで、
その言語を使うことで、自分はみなさんとコミュニケーションができ、
考えや気持ちのやりとりをすることができること。
自分が音を通してみなさんに語りかけることは
すべて自分の心、そして魂から出てくるものであること。
みなさんのあたたかさや気持ちは自分にとってとても大切で、
創造することや、自分の音楽がみなさんの心に触れているのだと信じることを助けてくれる、
そして日本で過ごす時間はいつもとても心地よいということ。
日本のファンのみなさんにとって新しい年が幸せなものであること、
愛のある誠実な人たちとともにいられること、毎日が美しい音楽で満たされていること、
そして、みなさんとご家族の健康と幸せを願っているということ。
4月に日本で会えることを大変楽しみにしています。

…というようなことが書いてあります。
いや本当に、良い人に囲まれて生きられることほど幸せなことはないですよね。
ニコライさん、ごもっとも。

さて、来日の度に日本語が上達していて、今にも和歌でも詠みそうな勢いのニコライさん。
今年は4月に東京交響楽団の定期演奏会に出演するため日本にやってきます。
飯森範親さんの指揮で、ショパンのピアノ協奏曲第2番を演奏予定。
4月18日ミューザ川崎シンフォニーホール19日サントリーホールです

2012年の東響との共演時はまだミューザが修復中で、別のホールで演奏したんでした。
(サイト上の写真は、本人曰く16、7歳のときのものですね。
ただでさえ若いのに、さらに若い!)

それにしても最近、どうもある程度日本語を解読していそうな気配なので、
こわくて余計なことが書けません。
もちろん、いつだってご本人に見られて困ることは書いていないつもりなんですけど…!

2015年を迎えて

2015年がやってきました。
みなさん年越しはいかがお過ごしだったでしょうか。
WEBラジオみよたカンタービレでは、大晦日、元日と、
「ジルベスターで世界旅行」「ニューイヤーメドレー」の2回をアップしています。
(いつものサイトの調子が悪いようで、
みよたさんのブログからダウンロード先に飛んでいただくようになっています)

ジルベスターで世界旅行の回で
話すのを忘れた(というか、音楽に関係ない)エピソードがひとつ。
私が唯一海外で年を越したことがある国は、インドです。過去2回。
インドの人たちは年末年始にはそんなに長い休暇はとらず
(日本以外はそういう国が多いのかもしれませんが)
私が出入りしていたオフィスでもスタッフは大晦日まで一応仕事をし、
そして1月2日には出て来ていました。
インド人は働き者だと錯覚しそうになる一瞬です。
初めてのインドでの年越しのときは、
爆竹を鳴らす音がうるさくてあまりおめでたい気分になりませんでしたが、
2度目のときはデリーの中心部で花火が上がるというので、
インド人の友人たちと出かけました。
いろいろな路地が通行止めになっていたりして道に迷い、
挙句の果てには野犬に囲まれ吠えらる、という恐ろしい年越しを過ごしたなあ。
…という、まったく音楽に関係ないジルベスターエピソード。

ところで、昨年は年明けに何を書いたのかなと思ったら、まだこのサイトを開く前で、
旧ブログになぜか実家の台所と母の話を書いていました。なつかしいな。
ここで書いたいくつかの「2014年の計画」の中で
4つのうちの3つは実行したようですが、
一番骨が折れそうなインドの計画は、
いい足掛かりは得ながらも実行に移せずに1年が過ぎてしまいました。
今年こそ暑くなる前にインドに行こうと思っていたところで、
年明けから怖い事件のニュースを見かけ、また怖気づいているところです。
こういうときは、男だったらよかったのにと思います。
どんな対策があるだろう…
少年風か、ちいさいおじさん風の恰好で過ごすとか…。
(少年風は、意外といけるんじゃないかと思うのですが)

さて、2015年。
今年は目の前の仕事をこなすことで精いっぱいな状態から脱して、
もう少し頭を使い、攻めの姿勢で、「思いついたら慎重に実行」していきたいと思います。
世の中には、出会って幸せになること、気が付くと楽になることがいろいろあると思いますが
そういうことをたくさん集めてきて発信できるような仕事を目指したいと思います。
それをすることが何のためになるのか、考え始めるときりがないし答えは出ないけど、
まあ、とりあえずやってみます。
今年はいろいろなコンクールもありますし、どうなることやら。

2015年がみなさまにとってすばらしい年になりますように。
本年もどうぞよろしくお願いします。

ユリアンナの“プロコフィエフ大好き”

この秋にした2度のインタビューから、いくつかの場所でユリアンナ・アヴデーエワのインタビューを書いています。
先の日本ツアーのプログラムについて、そして近況について聞いたのがこちらのKAJIMOTOのサイトにあるインタビュー。
そして、2015年2~3月のソヒエフ指揮トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団とショパンのピアノ協奏曲第1番を演奏することについての、ぴあのサイトでのインタビューはこちら
あとはもうすぐ発売される月刊ピアノ2015年1月号でも、録音についての記事が掲載される予定です。

ショパンのピアノ協奏曲、彼女はあれからの4年間で何度弾いているのでしょうね。その度に新しい発見があるとインタビューでは言っています。
コンクールで優勝したということが正直まだ信じられないと言っていたのも印象的でした。ユリアンナさんは、コンクール中に話していた印象から今も雰囲気がずっと変わらないように思いますが、それはそのせいもあるのかもしれません。ほら、たまに、ああ変わっちゃったなー、って感じる人もいますからね。余計なお世話ですけど。

そういえば9月のインタビュー中盛り上がったのは、プロコフィエフの話題になったとき。実はプロコフィエフが大好きなんです…とちょっとはにかんだ表情で語り始め、どうも相当好きそうなので、「それじゃあ、ヤマハや事務所の近くの銀座ライオンには行った?」(プロコフィエフが日本に来たとき食事をしたと日記に書いてある)と尋ねると、にわかにエキサイトした様子で、横にいたマネージャーさんを、どうしてすぐ連れて行ってくれなかったの!!と、たっのしそ~に責めていました。かわいいね。

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そんなラブ☆なプロコフィエフも収録されている新譜はこちら
見事に構成されたショパンの前奏曲集もすてきです。たっぷり2枚組。

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こちらはタワレコイベント後のインタビューの際のユリアンナさん。
最近は髪をまとめるスタイルがお気に入りなのか、ステージでもインタビューでも、いつもこのヘアスタイルでした。以前の、演奏中はサイドの髪だけまとめて、バックステージでは降ろすというのもかっこよかったですけど。
それにしても、いつ見てもくっきりしたお顔立ち。彼女の顔を眺めるたび、朝起きてユリアンナみたいな顔になっていたら自分はどうするだろう……と、いらぬことを考える、今日この頃。

チョ君のリサイタルはもうすぐ

「ちょっとほっそりして大人っぽくなった」とジャパン・アーツ公式ツイッターにもありましたが、昨日のプレトニョフ指揮東フィルとの共演を聴きに行かれたみなさん、チョ君のほっそりっぷりはいかがでしたでしょうか。演奏もチョ君らしさの感じられるすてきなものだったようですね。私は聴きにいけませんでしたが、演奏、ほっそりっぷり、短髪っぷり、どれも気になります。

コンサートシーズン真っ只中、演奏会が毎日たくさんありすぎてわけわからなくなっている音楽好きのみなさん、お忘れになっていませんか。チョ君、このあと10月24日に再びプレトニョフ指揮東フィルとの共演、そしてその後10月27日(火)は浜離宮朝日ホールでリサイタルがあります(ホールのサイトのトピックスには、10月上旬に届いたらしいプログラムに寄せてのメッセージが掲載されています)。

以前アップしたインタビューの情報については前にもここの記事でご紹介しましたが、刻々と変化を遂げる若者…もとが比較的ピュアな音楽だっただけに、大人の階段昇ってゆくにつれての変貌ぶりも大きい。今回も期待できるのではないでしょうか。

最近ちょっと思うのですが、一見自信満々でオレサマ的な演奏家より、控えめっぽい人のほうが実は超スーパー自信満々だったりするのではないかということ。もちろん、どちらも自分の信念を持っていることは共通しているし、個人差もあるでしょうけれど。そしてどちらが良いとか悪いとかいう意味でもないんですが。
わたくし、チョ君はあっさりおとなしい風に見せかけて、実は確信みなぎる派の男なのではないかと推測しています。まあ、そうでなくてはあんなに強い演奏はしませんよねきっと…。
ものすごく熱いのに、どこか冷静さを保った演奏をしてくれる。安心して聴いていられるんだけれど、もちろんつまらないということはまったくない。こういう絶妙なラインの演奏をする若手って、あんまり他に思い浮かばないなと、今思いました。
それに来年はいろいろなコンクールもあるし、今のうちにもう一度聴いておくのもいいかもしれませんよ…なんて。

◇チョ・ソンジン ピアノリサイタル
10月27日(火)19:00 浜離宮朝日ホール

福間洸太朗さんの新連載

これまでにも幾度かインタビューをさせていただいている福間洸太朗さん。
先月は新アルバムをリリース、さらにはフィギュアスケートとのコラボレーションの活動も今話題になっていますね。

そんな福間さんの日本コロムビアの特設サイトで「福間洸太朗の足あと」という連載がスタートしました。クリーヴランド国際ピアノコンクール優勝後の日本デビューから今までの活動を、改めて紹介するという内容です。
……というのも、福間さんは見かけによらずこれまで演奏をしている場所がわりとワイルドだったりするので(アフリカとか、アマゾンとか)、それをもっと知ってもらおうと。
ベルリンと日本を拠点にしていると言いつつ、「同じ場所に1ヵ月以上いるとどこかに行きたくなってしまう」ということで(自由を求めているらしい)、日本にお戻りのタイミングを見計らってお話を一気聞きし、少しずつ紹介してゆく、という記事を書かせてもらうことになりました。


今回公開された第1回は、日本人初の優勝で話題となったクリーヴランド国際ピアノコンクール優勝のときのお話。実はそのときに起きていた出来事と当時の心境が語られています。
当時まだ二十歳ですもんね。悔しかったし辛かっただろうなと思います。
実はこの記事をまとめるいろいろなミーティングの中で、一瞬フワッと、この批評記事のことを紹介していいのだろうかと心配する声も上がったりしました。
でも福間さんご本人には全然ためらう様子はありませんでした。もう過去のことだし、あの時があるから今があると。完全に乗り越えたんですね。彼の中で、自分の音楽や活動への自信が揺るぎないものになったのだなあと、つくづく。
賛辞をうけることもあれば、公で批判されることもあり、それを乗り越えることまでが芸術家の仕事だと思うと、やっぱり本当に強い精神がなくては進めない道なのだなと思います。芸術という答えのないものを批判するとき、信念と責任感を持ってする人ばかりではないでしょうし。(クリーヴランドの件がどうこうと言っているわけではありませんけどね)

今月10月24日には浜離宮朝日ホールでリサイタルも行われます!
CDリリース記念だというのに、単にCDの収録曲目を演奏するわけではないところが、やりたいことのアイデアにあふれまくっている福間さんらしい。
「鐘」というキーワードでつながれた作品を演奏するそうです。

2014年10月24日(金) 19:00 浜離宮朝日ホール
ラフマニノフ:幻想的小品集 Op.3 より 第2曲 前奏曲 嬰ハ短調「鐘」
チャイコフスキー:12の性格的描写-より「11月:トロイカ」、ドゥムカ-ロシアの農村風景
スクリャービン:幻想曲 ロ短調 Op.28
ボロディン:小組曲より「第1曲 修道院にて」「第7曲 夜想曲」
バラキレフ:東洋風幻想曲「イスラメイ」
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」

トリフォノフ、ただいま来日中

ダニール・トリフォノフ、来日中です!
ここまで、岡山、神戸、前橋、武蔵野、そして横浜での公演を終え、
残すところはゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管と共演する2公演と、
千葉、東京でのリサイタル2公演。

★協奏曲
10月16日(木) 愛知県芸術劇場コンサートホール
10月18日(土) 所沢市民文化センター ミューズ
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番

★リサイタル
10月19日(日) 青葉の森公園芸術文化ホール
ストラヴィンスキー:イ調のセレナード
ドビュッシー:「映像 第1集」より 1. 水の反映、3. 運動
ラヴェル:「鏡」より1. 蛾、2. 悲しい鳥たち、3. 洋上の小舟、4. 道化師の朝の歌
リスト:超絶技巧練習曲集 S.139より

10月21日(火) 東京オペラシティ コンサートホール
バッハ/リスト編:幻想曲とフーガ ト短調 BWV.542
ベートーヴェン:ピアノソナタ 第32番 ハ短調 Op.111
リスト: 超絶技巧練習曲より

曲目や最近の活動についてのインタビューが、ジャパン・アーツのサイトにアップされています。お話の中で、一日3種類のピアノを弾くのがトレーニングになったと言っていますが、この前リシッツァさんにインタビューしたときも同じような話をしていたなぁ。

さて、13日は台風がじわじわと迫る中、横浜みなとみらいホールでリサイタルを聴いてまいりました。プログラムは、青葉の森と同じ、前半がストラヴィンスキー、ドビュッシー、ラヴェルのほう。
5月にイスラエルで聴いた演奏は、ルービンシュタインコンクールのオープニングの一部だったため、フルのリサイタルを聴くのは久しぶりです。
実を言うと、トリフォノフ前回来日時のリサイタルでは、すごく楽しんだと同時に多少取り残された感があったので、今回はどう感じるのか、楽しみ半分、不安半分。あの自由な魂に自分はついてゆくことができるだろうかと……。
しかし、今回の演奏はすばらしかったです。
特に前半のドビュッシー、ラヴェル。感情の機微を繊細に、しかし鮮烈に。とても自由なんだけれど、暴走するようなところはなく。なにより、あの撫でるようなタッチで鳴らされるやわらかい音の美しさ。使用ピアノはファツィオリのF278です。ショパンコンクールの時、トリフォノフは軽い鍵盤を好んだと調律の方がおっしゃっていましたが(一方、同じファツィオリを弾いたデュモンは重いほうがいいと言うので調整が大変だったとのこと)、軽い鍵盤で見事に音をコントロールし、透き通る音を響かせます。こんな音を引き出してもらったら、調律の人も嬉しいだろうなぁと思わずにいられませんでした。「ちょっと聴いた~? このピアノ、本当はこんな音するんだから!!」と、客席中に言いたくなるんじゃないだろうか。ちなみに今日の調律担当は、以前ルービンシュタインコンクールのインタビューでもお話を聞いた越智さんです。
このところ、大きなホールでさまざまなピアニストが弾くファツィオリを聴く機会が増えたように思うのですが(サロン的な場所では前からよく聴くことがあったけど、最近大きいホールで聴くことがすごく増えたように感じます)、やはりトリフォノフの出す音は一番しっくりくる、ような気がします。この楽器、あの方の指のつくりと異様に相性がいいのでは。

そして後半、リストの超絶技巧練習曲集。ひとつひとつの短い曲であれだけのドラマを作るのはさすがです。曲の細部というより、大きな流れを大事にしているという感じ。ある意味でトリフォノフらしさが出た、がががーっと走って行くような部分もあるのだけれど、だからこそ作品全体のストーリーが見えてくるという。当初の全12曲から変更となり、順番を入れ替えた10曲が演奏されましたが、この曲順もよく考えていい流れを作ろうとしたことがわかるものでした。


こちらは終演後のトリフォノフ。
今日はピアノがすごくしっくり来たようで、パーフェクトだったと、嬉しそうに、早口でなんだかんだしゃべり倒していました。

もともとベートーヴェンの32番のソナタを弾くほうのプログラムにかなり興味があったのですが、わけあって今日の横浜公演を聴き、トリフォノフのフランスもの、聴いてよかった……とつくづく思いました。
というわけで、関東エリアにお住まいで横浜公演を聴き逃したみなさん、まだ千葉と東京が別プログラムであるので、両方制覇されるもよし、どちらかを選ばれるもよし。

ちょっと変な言い方かもしれませんが、今回の演奏を聴いて、トリフォノフは一周まわっていい感じで戻って来てくれた、という感じがしました。とはいえもちろん、いつも通りの(笑っちゃうほどの、いい意味での)ヘンタイな瞬間は健在ですので、ご心配なく。

次の来日はどんなプログラムを聴かせてくれるのか、すでに楽しみになっています。オール・フランスものとか、意外といいかもなぁ……絶対ないだろうけど。

直前告知、ホロデンコのリサイタル

先にせんくらの話題を紹介したホロデンコ、
9日名古屋、10日東京でも演奏会があるの、みなさんお気づきですか??

名古屋は宗次ホールです。
仙台で聴いたプログラムが合体した内容。

10月9日(木)18:45 3,500円
ベートーヴェン
ピアノソナタ 第10 番 ト長調作品14-2
ピアノソナタ 第17番 ニ短調作品31-2「テンペスト」
ショパン
舟歌 嬰へ長調 作品60
24 の前奏曲 作品28

あの良い響きのホール、この内容でたった3,500円…。
全席自由ですので、早めに行って手元の見える席に座るのがおすすめ。
信じられないような手つきで24の前奏曲を弾きますから!!

そして東京は、田町にあるファツィオリ、ピアノフォルティのショールームです。
すなわち、使用ピアノはもちろんファツィオリ!

10月10日(金)19:30 4,000円
J.S.バッハ 「フーガの技法」

プログラム、なんとバッハのフーガの技法です。
ご本人たっての希望によるプログラムだとか。
先日、せんくらのアンコールでちょこっと披露したパーセルがとにかく刺激的でおもしろく、
あれを聴いて以来、ホロデンコのこうしたバロック時代の作品に興味がわきまくりです。
フーガの技法も、必聴のプログラムだと思います。
こちらも、手元の見える席でぜひ。
これまた信じられない手つきで、異次元のポリフォニ~な世界を紡ぎ出すことが予想されます。

…というのも。
先のインタビューで少しファツィオリの話になったのですが、
とても興味深いことを言っていました。

「ファツィオリはとても良いピアノ。すごく良い音をもっている。
とくに、ポリフォニックな音楽を演奏するときにすごくいい。
一体どうなっているのかわからないけど、すべての声部で違う音がするんだ。
まるで2人か3人の違う人が会話しているような表現ができるんだよ!」

これを聴いて、ホロデンコがファツィオリで弾くバッハ、聴きたいわ…と、心から思いました。
実は今日、エマールの平均律を聴きながらも、
心のどこかでホロデンコのあのクレイジーな指さばきが忘れられず、
ホロデンコなら平均律どうやって弾くのかな、なんて、
デート中に他の人のことを考えるみたいな、イカンことをしてしまったくらいです。

そんなホロデンコの演奏会のチケットがまだ残っていると聞いて、いてもたってもいられず
直前のご紹介をするに至りました。
運よくまだご予定の空いている方は、ぜひ…!

 

せんくら、そしてホロデンコ

仙台クラシックフェスティバル、行ってきました。
今回は、出演者のうち仙台コンクールの過去の入賞者のインタビューを主に行い、
合間の時間にいろいろな公演を聴くという、1泊2日の旅。
10月3日(金)、4日(土)、5日(日)の後半二日間を聴きました。
せんくら、かなり以前に行ったことがありましたが、そのときは日帰りで、取材の公演をいくつか聴いてバタバタ帰ってくるというものでした。なので、今回は初めてまともにせんくらを堪能した感じです。
今年でもう第9回目の開催だったんですね。震災の年も乗り越え、ここまで続けてくるのはきっと大変なことだっただろうと思います。

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メイン会場となる青年文化センターがある旭ヶ丘駅を下車すると、改札の前にピアノがどすんとありました。無料コンサートのために設置されたものです。今や、びっくりする場所での街中コンサートは珍しくありませんが、改札の前にピアノを持ってきちゃうところに、仙台の本気度を感じます。ピアノは一日ごとに(当然かもしれませんが)ちゃんと撤収して再設置していました。

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もうひとつの大きな会場である、イズミティ21では、ひこにゃん…ではなく、「むすび丸」が活躍していました。
(前回仙台に来たとき、あれ、ひこにゃんて仙台だっけ?と思ってよく見たら別のキャラクターだということに気づいて一度学んだはずだったんですが、今回も彼を見た瞬間、「あーひこにゃんだ!」と心の中で一度呼びかけてしまいました。よく見るとけっこう違うんですけどね)
かぶとをかぶったかわいらしいおむすびが、子供たちと写真を撮ったり、ティッシュを配ったりしていました。趣味は温泉めぐりと昼寝だそうです。

肝心のコンサートですが、せんくらならでは、せんくらだからこそ実現するかなり興味深い公演がたくさんあります。
「慶長遣欧使節スペイン到着400年記念」スペイン名曲コンサート、というのがあって(彼らは伊達政宗の命で宮城から出発したらしい)、ここではヴァイオリンの西江辰郎さんとギターの福田進一さんの共演によるファリャという、激レアで大変すばらしい演奏も聴くことができました。
チェロの山崎信子さんと津田裕也さんの公演も、すばらしかった。
仲道郁代さん、横山幸雄さん、舘野泉さんという3人が立て続けに出てくるコンサートもありました。一つのピアノでこの三人がかわるがわる弾くのを聴き比べるというのは、かなり興味深い経験でした。
もちろん、ホロデンコの演奏も聴きました。彼の演奏についてはプログラムによって、うわ!すごくいい!と思ったり、すごいと思うけどいまいちピンと来なかったりするのですが(ごめんね…個人的な趣味です)、今回も、やはり紛れもなくすばらしく変わったピアニストだなと思いました。私は普段、あんまり鍵盤の手元が見える席に座ることに関心がないのですが、この方に関してはその多彩な音色を出すためにびっくりするような手つきで弾いていることが多いので、だいぶ関心があります。
インタビューのアポイントの都合で聴くことができなかった公演もたくさんあるのですが、他にもいい公演がたっくさん。そしてどの公演も1000~2000円。

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完売の公演が多数でしたが、意外と(わたくし的に)いい公演のチケットが残っていることもあって、いろいろ考えるものがありました。
例えばホロデンコについても、土曜日250席のベートーヴェンのソナタ公演が完売していなくて、翌日曜日、400席のショパンは完売していたという。ホロデンコ、クライバーン優勝以降、初めての仙台訪問ですよ! しかもベートーヴェンとか弾いちゃったんですよ! 曜日や時間帯の問題もあるのでしょうが、とにかく、市場の動向を読むのはとても難しいことなのだなと、妙に考えてしまいました。
ちなみに聞くところによると、あっという間に完売したのは、約800席の中村紘子さんの2公演だったとか。しかもどちらも平日昼間の公演。さすがです。それに、中村さんは今回がせんくら初登場、たった1500円で聴けたんだもんね。それはみんな行きたいに決まってます!

さて、今回ホロデンコには、インタビューでたっぷりお話を聞いてきました。つっこんだ末の本音ポロリがとても興味深く、コンクールというものの公式サイトでどこまで書けるかはわかりませんが、できる限りご紹介できたらなあと思います。怒られない範囲で、ぐいぐい切り込んでいこうと思います。アップされたら、またご紹介します。

チョ・ソンジン、消えたさらさらヘアー

今さらですが、今月のぶらあぼにチョ・ソンジン君のインタビュー記事を寄稿しています。
10月27日に行われる浜離宮朝日ホールでのリサイタルについて。

2014年10月27日(月) 19時開演 浜離宮朝日ホール
モーツァルト:幻想曲 ニ短調 K.397
モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第3番 変ロ長調 K.281
シューベルト:即興曲集 D.935より 第3番 変ロ長調 Op.142-3
バルトーク:「野外にて」BB 89 / /Sz81
ショパン:即興曲 第1番 変イ長調 Op.29
ショパン:幻想曲 ヘ短調 Op.49
ショパン:4つのマズルカ Op.33
ショパン:バラード 第4番 ヘ短調 Op.52

ジャパン・アーツHPでは、
多少余計な話題も入ったインタビューほぼ全文バージョンを公開中。

このインタビューは、先のルービンシュタインコンクールの期間中、
本選の演奏後にとっつかまえて廊下でおこなったものです。
お疲れだったはずですが、すべての演奏を終えて安心していたのか、
これまでで一番リラックスした様子でお話を聞かせてくれました。

今回のプログラムから、モーツァルトの「幻想曲」とバルトークの「野外にて」を
コンクールのステージで一足先に聴きました。
チョ君の透明感ある音がモーツァルトに合うのは、わざわざ言う必要もないでしょう。
びっくりさせてくれたのはバルトークでした。
“シャイボーイ”チョ・ソンジン過去記事参照の、
内に秘めたデンジャラスな何かを垣間見た気がしました。
後半のショパンは、コンクールを視野に入れて増やしているレパートリーということで、
来年にむけての気合も感じられます…。
てっぺんを目指す男、チョ・ソンジン。
彼が15歳の頃、初めて浜松コンクールで聴いた時、確かに光る才能は感じましたが、
ここに何かが加わったらすごくなるだろうな…
そう思っていた何かが加わりつつある気配を、今のチョ君からは感じます。

モーツァルト、バルトークが聴けるルービンシュタインコンクールの演奏動画はこちら
(ショパンのソナタもいいよ)

今年20歳になったチョ君。
夏の間、4週間の兵役に行くことになっていたということで、
(普通2年間らしいので、かなり免除されているんですね)
戻ってから2ヵ月で、がんばって本調子を取り戻さないと!と言っていました。
それと同時に、坊主にした髪の毛は2ヵ月では戻ってこないよね…と心配していました。
次の来日時にはチョ君のあのサラサラヘアーにはお目にかかれないと思うと
少々残念な気もしますが、
きっとそのぶんバルトークのワイルドさに磨きがかかっているのではないかとも思います。
軍隊的なワイルドさがいいかどうかは別ですけど。

ところで、ジャパン・アーツHPに掲載のインタビューで
チョ君はふたりの男たちへの憧れを語っています。
師であるミシェル・ベロフ氏と、10月に共演するミハイル・プレトニョフ氏。

この前、某ピアニストさんのインタビューで、
一部のアーティストっていくつになっても心は永遠に青年なんだなと思うことがありましたが、
ベロフ氏もそんな、“永遠に枯れない”ピアニストの一人でしょう。
4年前、取材でご自宅に訪れたところ、嬉しそうに赤ん坊を連れて出てきたので、
お孫さんかと思ったら、お子さんでした(ベロフ氏当時60歳)。
そんなベロフ氏について、チョ君はその素直な感情表現と優しさについて、
「僕とは正反対」と照れ隠しに言いながら、憧れると語りました。

一方プレトニョフ氏については、そのユーモアセンスに憧れるとのこと。
以前このブログでも紹介したことのある日本語コメント動画を見れば一発でわかる、
あのキョーレツにシュールなユーモアセンスに憧れるとは、
チョ君もなかなか…。
チョ君が一体どこに向かっていくのか、見ものです。