ピアノの惑星について


 

 ピアノとはなんと魅惑的な存在なのか。
 人が操るひとつの“道具”ではある。
 しかしすばらしいピアニストが触れたとき、
 ふと気がつけば、心はその魅力に完全に支配されている、という。
 「ピアノの惑星ジャーナル」は、
 そんな魅惑のピアノにまつわるさまざまな話題を提供する、おだやかなウェブサイトです。
 独断と偏見で“今アツい!”と思われるアーティストや企画の情報、
 また、演奏会へのワクワク感を盛り上げる情報も発信します。
 毎日どっかしらでなにかしらが起こっている、ピアノの小宇宙を目指します。

 クラシック♪インド部ブログ
 管理人がなんとなく思いついたことを綴る雑記帳。

 惑星の本棚
 音楽にまつわる、気になった本を紹介。

 惑星のCD棚
 気になるCDを紹介。

 惑星の気まぐれ写真館
 なんとなく撮った写真や、これまで撮ってきて出しどころがなかった写真を、思いつくままにアップしてゆきます。

 不定期連載 ピアノ教室に通ってみた
 40歳をすぎてピアノ教室に通うと、本当にうまくなれるのかの、リアルなお話。

 カレーなるクラシック
 気になるカレーについての雑感。お味をクラシック音楽に例えてみるとか、みないとか。

 現場から特別レポート
 コンクールなど、ここぞというときには現場に行って何か書きます。

◇管理人◇
高坂はる香(音楽ライター、編集者)
インドの大道芸人のスラム研究→月刊ショパンの人→現在フリーライター、編集者。
クラシックのピアノを中心にさまざまなネタについて文章を書いています。
ピアノや西洋クラシック音楽とインドというすばらしい文化が刺激しあって
何かが生まれる瞬間を妄想しています。


最近の投稿

クライバーンコンクールこぼれ話


クライバーンコンクールについてのちゃんとした記事が出きったところで、最後に余談をつらつらと書きたいと思います。時間を持て余している方は、どうぞお付き合いください!

ピアノの話

今回、目に見えてわかりにくいのであまり話題にならないと知りつつ私が関心を寄せていたのが、ピアノのお話でした。
このコンクールではスタインウェイのみが使用されるということ、またバス・パフォーマンスホールに移ってからの調律師さんのインタビューはすでにご紹介しました。
けっこう個性の違う2台のピアノ、しかしロゴを見ただけでは違いは基本わからない…そんななかで、一部のコンテスタントがプログラムによってヒッソリとピアノをチェンジしていたのが、とってもおもしろいなと思った次第です。
違うメーカーに変えれば、音はもちろんメカニックの面で感触が大きく違うことも多いと思いますから、リハーサル時間の取れないコンクールでピアノをチェンジするのはそれなりに勇気のいることです。
しかし今回は、ニューヨークとハンブルクでタイプが違うと言えども、いずれもスタインウェイだったので、多くのピアニストが安心してピアノをスイッチしていたように思います。

おもしろいチョイスをしていたのが、まずはクレイトン・スティーブンソンさん。
彼はTCUでの予選&クオーターファイナルでNYスタインウェイを選び、特徴的な音を鳴らしていましたが(弾きやすさより音質を選んだ、というコメントはこちら)、バス・パフォーマンスホールに移ってからは、ステージによってハンブルクとNYを弾きわけていました。プログラムに合う音質をセレクトしたのでしょう。

アンナ・ゲニューシェネさんもまた、TCUではずっとハンブルクを使っていたのに対し、バス・パフォーマンスホールに移ってからはNYとハンブルクを使い分けていました。例えばモーツァルトのピアノ協奏曲はハンブルク。
調律師のベルナーシュさんが、今回のNYはしっかり鍵盤を押し込めばより大きな音が出ると話していたことと、アンナさんがモーツァルトのあとに「ブライトすぎる音でオーケストラを圧倒しすぎないようにすることは、ある意味チャレンジング」と話していたことが、つながりますね。ピアニストは本当にいろいろなバランスに気を配って音楽を作っています。

ちなみに優勝したユンチャンさんは、最初から最後まで一貫してハンブルク…かと思っていたら、ファイナルのラフマニノフ3番のとき、直前でピアノをNYに変えていたそうです。

(※ピアノの選択についての記述、一部誤りがあり、修正いたしました。元の記事は、スタインウェイの調律師さんからいただいたピアノセレクトの一覧に基づいて書いたものだったのですが、その後、直前でのチェンジなどがあったようです。教えてくださったUさん本当にありがとうございます。以後、情報に間違いがないよう気をつけます。申し訳ありませんでした!)

パーティーの話

クライバーンコンクールは、地元のお金持ちたちのサポートで支えられているコンクールだということが知られています。授賞式の賞の正式名称がやたら長い(しかも企業とかでなく個人名がついている)のはそういうことも関係していると思われます。そして、賞金の額がすごいということもお気づきになったはず。
コンテスタントたちのホームステイ先の立派さからもそのことは窺い知ることができたでしょう。
IMG_3293
(前の記事でも話題に出ました、マルセルさんステイ先のプールは飛び込み台つき!)

(亀井さんのステイ先には、見たこともない機能のついたソファがありました。ステイ先の紹介記事はこちら

もうひとつ特徴的なのが、コロナもなんのその、期間中のパーティーの多さ!

結果が出た後のさよならパーティーくらいならどこのコンクールでもありますが、途中でもバンバンやりますし、ロケーションにもいちいち凝っています。

まずは演奏順の抽選会から、超ロングなディナーパーティーの中で行われます。しかも演奏順の決定は、抽選で名前を引かれた人から自分で演奏順を決めていくという、なかなかの緊張を伴うスタイル……コンテスタントはフルコース出されたところで気が気じゃないですよね。
IMG_3611
(C)The Cliburn

以前このパーティーに出席したことがありますが、メインのフィレステーキを出されるころには、ピアニストみんな疲れてるだろうし早く帰って寝させてあげたい、という気持ちになりました。私自身が肉を切りながらモーレツに眠かったので…。

その他にもいろいろあります。
IMG_3238

こちらは、セミファイナルの後に行われる、毎回恒例のzoo party。場所はフォートワース動物園。とにかく暑いので、フローズン・マルガリータがおいしい。飲み過ぎ注意な感じです。

そして、コンクール開幕のときに採寸したウエスタンブーツがコンテスタントにプレゼントされます。
Cliburn_Orientation278
(C)The Cliburn
(オフィシャル写真にあったけど、この採寸中の足は誰でしょうね。マーベルの靴下)

IMG_3246
(いつも写真のポーズがイケメンだと評判の吉見さん。後ろは出来上がりを試着するコンテスタントのみなさん)

さらにこんなパーティーもありました。
フォートワースの有名なファイアーストーン&ロバートソン蒸留所でのウイスキーパーティー。地元出身の二人の男性がかつてゴルフコースだった場所を買い取ってオープンさせた、ウイスキーの蒸留所らしいです。

IMG_3318
(ウイスキー樽をバックに佇む亀井さんとマルセルさん。それにしてもこの二人、どちらも背が高いのに、マルセルさん写真だとものすごく背が高く写りますよね。トリックアート的な要素がどこかに隠されているのだろうか…)

ウイスキーカクテルやお肉料理が振る舞われ、ただただおいしいものを楽しんで帰ってくる感じ。ちなみに、お土産に買ってかえってきたほど、こちらのブレンドウイスキーがおいしかった! 今調べたら日本でも買えないことはないようだけど、やっぱり高い。もっと買ってくればよかった。

泊まっていた家の話

最後は私がお世話になっていたお家の話です。
家主のバリーさんはベテランのジャーナリストで、私が辻井くんが優勝した回のクライバーンコンクールを取材したときに知り合いました。

IMG_3612
(庭でサーモンをスモークしている)

バリーさんは若き日に日本の新聞社で働いていたこと、さらに奥様がインド人だったということで仲良くなり、フリーランスになってコンクールを全期間取材するようになってからは、お家にお世話になっています。
実は奥様は少し前にご病気で亡くなってしまったのですが、家には今もいたるところにインド感が漂っています。

IMG_3357
(ソファの生地がインドの布だったり、バスルームにガンジーのでかいオブジェが飾られていたり、いろいろびっくりします)

IMG_3264
(テーブルクロスもインドのプリント)

で、私がこちらのお宅にお邪魔するうえで最も楽しみにしていることが、このテーブルの上に転がっている、ねこのウキーちゃんとの再会であります。
もともとねこをかったこともなく、さらには他人様の家のねこと遊ぼうとしたところでなつかれたこともなかったのですが、5年前のウキーちゃんとの出会いは衝撃的でした。
よくわからないけどニャーニャー言いながらすごい寄ってくる。とにかくかわいい。そしてんだろう、なんか気が合っている気がする。
…おそらく単に、家主のおじいさんがねこと遊ぶみたいなタイプではないから、いいカモが来たぞという感じでかわいさアピールしてきているだけなのでしょうけれど。とにかくなでろと言ってくる。

ちなみに一度、よく見る棒の先のおもちゃを動かして追いかけさせるみたいな遊びは好きなのかなと思ってやってみたら、最初はどうにも抑えきれない衝動的な感じで追いかけていたけど、1分もたたないうちに「ハッ」と我に返ったような表情を見せ、「そういうのに反応しちゃう自分がイヤなの、やめてくれる?」みたいな感じで、そっぽを向いて部屋から出て行きました。そんなねこいるの。
でもでも、そんなところにも共感するよ、ウキーちゃん!!

IMG_2981
この媚を売らない感じの目つきがいい。そのわりに膝の上にのって、パソコンの前に割って入ってくる。帰国して2週間経ちますが、2日に一回は動画と写真見てます。さみしくて。

ところで我が家主、ジャーナリストとして結構長く日本にいて、その後インドやアフリカにいったり、中東で牢屋に入れられたりしていたやばい人だという話は聞いたことがあったのですが、今回はじめて、「もともと早稲田大学に留学したんだけど、学生運動が始まって、その写真を撮る中で新聞社の手伝いをするうちにジャーナリストの道に進んだ」という事実を聞きました。
そしてなんと、三島由紀夫のあの切腹があったあのとき、市ヶ谷駐屯地にいたらしい(ジャンプしたけど直接は見えなかった、といっていた…)。
生前の三島由紀夫を熱海に訪ねて家族と1日過ごしたとも言っていました。
「彼は若い白人の青年を前に、知的でエレガントな優しい男を演じていると感じた」だって。すごい証言。

と、そのようなわけで最後は完全にクライバーンコンクールと関係のない話になりましたが、お付き合いどうもありがとうございました。
そして実は今月、記事では書ききれない、さらには書いて残すのはちょっと気が引けるなというクライバーンの裏話を、一気にお話しする機会がございます!!

朝日カルチャーセンター立川教室
ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール2022現地レポート
7月30日(土)15:30〜17:00

コンテスタントたちの魅力、コンクールの裏話やいろいろな出来事、審査にまつわるお話などを、現地で撮ってきた写真や動画とあわせて、たっぷりご紹介したいと思います。
教室・オンライン、どちらでも受講可。当日の予定があわなくても、後日1週間アーカイヴで動画が見られます。みなさんご参加のうえ、ぜひ教室やコメントで、コンクールのご感想や質問などお聞かせくださいね。

クライバーンコンクールの現地レポート、あちこちに記事を書きましたが、とりあえずはこのあたりで一度完結です。また何か思い出したら書くかもしれませんけれど。
どうもありがとうございました。

  1. クライバーンコンクール、印象的なコンテスタント達のお話 コメントをどうぞ
  2. クライバーンコンクールが終わって…まずは日本のお三方のお話 コメントをどうぞ
  3. スタインウェイの担当調律師、ベルナーシュさん コメントをどうぞ
  4. クライバーンコンクール、セミファイナル3日目に思う コメントをどうぞ
  5. クライバーンコンクールのスタインウェイ…ハンブルク?NY? コメントをどうぞ
  6. 第16回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール コメントをどうぞ
  7. ヴァン・クライバーンコンクールが始まりました! コメントをどうぞ
  8. 審査員インタビューはみだし編 コメントをどうぞ
  9. ファツィオリ調律師さんインタビュー(ショパンコンクールのピアノ) コメントをどうぞ