ピアノの惑星について


 

 ピアノとはなんと魅惑的な存在なのか。
 人が操るひとつの“道具”ではある。
 しかしすばらしいピアニストが触れたとき、
 ふと気がつけば、心はその魅力に完全に支配されている、という。
 「ピアノの惑星ジャーナル」は、
 そんな魅惑のピアノにまつわるさまざまな話題を提供する、おだやかなウェブサイトです。
 独断と偏見で“今アツい!”と思われるアーティストや企画の情報、
 また、演奏会へのワクワク感を盛り上げる情報も発信します。
 毎日どっかしらでなにかしらが起こっている、ピアノの小宇宙を目指します。

 クラシック♪インド部ブログ
 管理人がなんとなく思いついたことを綴る雑記帳。

 惑星の本棚
 音楽にまつわる、気になった本を紹介。

 惑星のCD棚
 気になるCDを紹介。

 惑星の気まぐれ写真館
 なんとなく撮った写真や、これまで撮ってきて出しどころがなかった写真を、思いつくままにアップしてゆきます。

 不定期連載 ピアノ教室に通ってみた
 40歳をすぎてピアノ教室に通うと、本当にうまくなれるのかの、リアルなお話。

 カレーなるクラシック
 気になるカレーについての雑感。お味をクラシック音楽に例えてみるとか、みないとか。

 現場から特別レポート
 コンクールなど、ここぞというときには現場に行って何か書きます。

◇管理人◇
高坂はる香(音楽ライター、編集者)
インドの大道芸人のスラム研究→月刊ショパンの人→現在フリーライター、編集者。
クラシックのピアノを中心にさまざまなネタについて文章を書いています。
ピアノや西洋クラシック音楽とインドというすばらしい文化が刺激しあって
何かが生まれる瞬間を妄想しています。


最近の投稿

グリゴリー・ソコロフを聴いた


 今回の旅で特に楽しみだったイベントの一つは、モナコでグリゴリー・ソコロフのリサイタルを聴くということでした。日本に来てくれないソコロフ…ヨーロッパにいるときにうまくタイミングが合って聴けないものかと、いつもその機会をうかがっておりました。

モナコのモンテ・カルロへは、ニースから電車で30分ほど。そんなわけで滞在はニースです。

ニースには良い美術館がたくさんありましたが、中でもシャガール美術館は特別な空間でした。そして土曜日の昼なのに、すいている。
シャガール自ら生前に建造にかかわっていて、聖書の物語を描いた連作が展示されています。シャガールはユダヤ系ロシア人なので、いわゆる旧約聖書の物語が描かれています。自身の独創的な観点で物語が紐解かれていて、それは優しい光を放っていました。
IMG_5157

シャガールは神様と対話していた…音楽でも美術でも、心身を削ってこういう本質的なものを掴んで見せてくれるアーティストは尊いですね。改めてシャガールの宗教作品に囲まれてみると、本当に優しい人だったんだろうなと感じました。自分としては、この美術館に来て、なんとなくシャガール好きだなと思っていた理由がやっとわかった感じ。

 

さて、ソコロフのリサイタルです。モナコ公国、もしかしてビザが必要だったりするのかと思ったら、そのようなものは必要なく。さらにはフランスからするっと国境をこえて、いつの間にか入国できます。
D1ViPDuWsAA6e9i
D1ViPDxXgAEWTDs
D1ViPDxX4AAa29O

景色がとにかくすごい。光の感じ、色の感じがずばり違う。

会場は、モンテ・カルロのカジノに併設されたホール。
モナコは海と山が隣り合って勾配がすごく、ホールも、屋根は見えているのにどうしたらたどり着けるかしばし悩みました(このカラフルな部分が、ホールの屋根)。

IMG_5285 2

ホールの横から振り返るとこんな景色。
IMG_5284

会場はこのような感じです。
IMG_5288

ロビーには錚々たる顔ぶれの指揮者の写真が飾られていましたが、その中にヤマカズさんのいつもの写真発見。そういえば、モンテカルロ・フィルの芸術監督なんですよね。
IMG_5291IMG_5289

IMG_5293

普段は音のことを考えて後ろのほうの席をとりますが、初ソコロフだし前の方でよくタッチを見たいなと、前から2列目のかなり左端のほうの席をとっていました。
すると開演直前に隣同士で座りたいカップルが、席をかわってくれないかと。彼女の持っていたのが、なんと一列目のど真ん中の鼻血シート。初ソコロフをすごい場所で聴くことに。この席で聴くことは滅多にないけど、たまに座ると、何もかも見えて楽しいものです。

IMG_5298
ソコロフのリサイタル、演目はベートーヴェンのソナタ3番とバガテルOp.119、ブラームスのOp.118と119。最高かよ…というプログラム。

ベートーヴェンは、初期のOp.2と後期のOp.119で全くタッチが変わって、そうですよね、そういうことですよね、と思う。正統的。なのに最初から最後まで、次は何が来るのかワクワクしっぱなし。1950年生まれということで今年69歳になるソコロフですが、全く枯れないタイプなんですね。こんなにいい意味でギラギラとしたブラームスのOp.118、119は初めて…でもそれがまたいい。逆立った毛をブラシで梳かして撫でてくれるような、そんな演奏(変な例えですみません)。

大歓声の客席を前にしても、ひとっつもニコリともせず、それなのに6曲もアンコールを弾いてくれる。ツンデレおじさんっぷりにまたシビれてしまいます。ロシア系のピアニストって、わりとときどきそういう人いますよね。プレトニョフとか、コブリンとか、なんかそういう美学があるんだろうなって思ってカーテンコールを眺めていると、逆にかわいらしく(?)思えてきます。このアンコールがまた、ラモーからラフマニノフ、ドビュッシーなどと、本当にいろいろなものを弾いてくれて、いろんなタッチと音を聴くことができました。

強音も弱音も、お腹の底から、脳の内側から揺さぶってくる。単に美しい音という表現では似合わない。ところどころで、強烈に含蓄のある音が鳴る。ソコロフの音は特別だというのはこういうことか…と思いました。生で聴くことができてよかったです。

時差や長距離のフライトがいやだという理由で、ずっと演奏活動はヨーロッパのみに限っているということですが、たくさんのピアノファンがいる日本にも来てくれたらいいのに。
誰かちょっとずつ移動させながらリサイタルをセッティングして、はっ、気づいたらウラジオストック!もう日本すぐそこだから行っちゃいなよ、みたいな感じで、だましだまし連れて来てくれたらいいのに。

一度聴けて満足したかと思いきや、次もヨーロッパにきたらチャンスを狙って行くと思います。

  1. インドのオーケストラ、イギリスへ行く コメントをどうぞ
  2. パペットショーどうでしょう コメントをどうぞ
  3. ヤマハがインド現地生産を開始、チェンナイ工場を見てきました コメントをどうぞ
  4. 部品の巣窟的空間、ムンバイの楽器修理工を訪ねてみた コメントをどうぞ
  5. ザキール・フセインさんのタブラ協奏曲 コメントをどうぞ
  6. インド人チェリストが祖国に作った素敵な学校に行ってきた コメントをどうぞ
  7. 「kotoba」秋号、メータと日本の楽器メーカーの奮闘のお話 コメントをどうぞ
  8. マルク=アンドレ・アムランさんのお話 コメントをどうぞ
  9. 「kotoba」夏号、インドの音楽学校事情 コメントをどうぞ