ピアノの惑星について


 

 ピアノとはなんと魅惑的な存在なのか。
 人が操るひとつの“道具”ではある。
 しかしすばらしいピアニストが触れたとき、
 ふと気がつけば、心はその魅力に完全に支配されている、という。
 「ピアノの惑星ジャーナル」は、
 そんな魅惑のピアノにまつわるさまざまな話題を提供する、おだやかなウェブサイトです。
 独断と偏見で“今アツい!”と思われるアーティストや企画の情報、
 また、演奏会へのワクワク感を盛り上げる情報も発信します。
 毎日どっかしらでなにかしらが起こっている、ピアノの小宇宙を目指します。

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◇管理人◇
高坂はる香(音楽ライター、編集者)
インドの大道芸人のスラム研究→月刊ショパンの人→現在フリーライター、編集者。
クラシックのピアノを中心にさまざまなネタについて文章を書いています。
ピアノや西洋クラシック音楽とインドというすばらしい文化が刺激しあって
何かが生まれる瞬間を妄想しています。


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チャイコフスキーコンクール審査員、オフチニコフ先生のお話


チャイコフスキーコンクール、審査員の先生のお話。お二人目もロシア人ピアニスト、現在モスクワ音楽院教授を務めるウラディーミル・オフチニコフ先生です。
モスクワ音楽院でナセドキン(G.ネイガウス、ナウモフの弟子ですね)の元学んだピアニストで、やはり、ロシアンピアニズムを後世に継承する有名な教育者です。

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ウラディーミル・オフチニコフ先生
◇◇◇

—ファイナルの結果について、どのようにお感じですか?

とても嬉しく思っています。特にファイナルでは、全く異なるタイプの音楽家、違う楽器、さまざまなスクールの音楽とメンタリティを聴くことができました。本当にきらめくようなファイナル・ラウンドでしたね。審査員としてコンクールに参加していたにもかかわらず、優れたピアニストの音楽とともに時間を過ごしたことで、とても楽しむことができました。彼らの将来がすばらしいものであることを願っています。

—今回、優勝したカントロフさんが評価されたポイントは何だったのでしょうか。

カントロフもそうですが、加えて藤田真央の演奏は、このコンクールの中で特別でした。二人の異なるタイプのすばらしいスターだったと思います。私たちは彼らのソロとコンチェルトを聴くことができてとても幸せでした。聴衆も、打ち上げ花火のようなパワフルな反応をしていましたね。まるで演奏会を聴いているようでした。

—今回は、5つのメーカーのピアノが出されていました。

これもまた、フラワー・ブーケのような存在でした。5台はそれぞれ異なるレベル、音、クオリティを持つ楽器でしたが、こうしてコンクールで聴くことができたのはとてもおもしろい経験だったと思います。楽器によるコンペティションのような一面もありましたね。

—ちなみに、ピアノの選択は結果にとって重要だと思いますか?

それはとても重要だと思います。これはただの音楽イベントではなく、私たちは音の質も聴いて判断をしているのですから、全てのことが重要です。特に音は、音楽にとってとても大切な要素です。
時にはピアノが十分な役割を果たしていないとか、フォルテが十分でない、逆に強すぎたりドライすぎたりすることもありました。もちろん、誰が演奏しているかにもよるものではありますけれどね。

—中国のピアノ「長江」の印象はいかがでしたか?

悪くありませんでした。十分に良かったと思います。ブライトで力強い音がスタインウェイのようだと思うこともありましたが、時々、少し物足りないときもありました。もしかしたらピアニストの弾き方によるところもあるかもしれませんけれど。
いずれにしても、演奏者に魂の内面から音楽的に言いたいことがあるのなら、どんな楽器でもすばらしく演奏することができるとは思いますけれどね。

—例えば、カントロフさんはファイナルでピアノを変えましたが…。

あっ、そうでした? 覚えてないな…。

—2次まではカワイを弾いていましたよね。

ああ、そうだったっけ! それでファイナルはスタインウェイを?

—そうです。…あのぅ、オフチニコフ先生、もしかしてそれってやっぱり、いい音楽を持っているならピアノは何を選んでも重要でないってことですかね(笑)。

そういうことですね(笑)。音楽がなにより重要だということです(笑)。

—ところで、先生が求めていた才能、コンクールで次のステージに進んで欲しいと思ったのはどんなピアニストですか?

私はロマンティックなピアニストが好きですね。例えば時々は、プレトニョフ氏のような、とてもクレバーで深い音楽性を持つピアニストを聴くことも好きです。でも彼の演奏は、感情的で力強い声を持つというタイプではありませんよね。一方で、私は「ノイハウス・スクール(ネイガウス・スクール)」のピアニストですので、もっとオープンで感情が豊かな音楽と演奏の方を好みます。
今回のファイナリストについては、カントロフと藤田真央の将来に大いに期待しています。

◇◇◇

最後のお答え、これぞロシアンピアニズムの流派のプライド!とか思って勝手に興奮してうぉぉぉーとリアクションしたら、オフチニコフ先生、そうかいそうかい、という笑顔で無言で眺めていらっしゃいました(実際には単に若干引いてたのかもしれない)。
でもでも、オフチニコフ先生がすばらしいというカントロフさん、師のレナ・シェレシェフスカヤ先生はプレトニョフさんと同じフリエール&ヴラセンコ門下ではないかとか(ちなみに私がはインタビューをお願いする直前、オフチニコフ先生とシェレシェフスカヤ先生は熱心に話し込んでいた)、さらにいうと、藤田真央さんの先生の野島稔さんはオボーリンの弟子じゃないかとか。その辺りのことって掘ったら大変なことになるのでしょうからここで説明するミッションは華麗に放棄いたしますが、とにかくいろいろ考えるとすごくおもしろいですね。
しかも結局、何系列だからどうとか、ピアノの選択はこうだとか、いろいろいうわりに、いいものはなんだっていいってうっかり(?)言っちゃうオフチニコフ先生サイコーと思いました。

…で、全然関係ないんですけど、わたくし今回、オフチニコフ先生のお姿を初めて近くで拝見したんです。それで驚いたのですが、スラリーンとしていて素敵なんですね。この年代のロシアの先生っぽくないというか(…いえ、もちろんどしんとしたロシアの先生たちもかっこいいし素敵なんですけどね)。そしてもっと難しくて厳しい感じの方なのかと思っていたら、物腰やわらかで優しかった。
そんなわけで、写真を撮る時に、とっても素敵ですよー、ほら、もっと笑ってくださいよほらほら、とかやっていたところ(お話ししているときのにっこり笑顔がどうしても撮りたかった)、先生照れてしまって首を傾げてしまい、せっかくの爽やかスマイルが、ブレてしまった。
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