デリーのスラムに暮らす大道芸人カーストの日常


 大学院生のときに書いたインドの大道芸人のスラムについての修士論文。
都市スラムに暮らすパフォーマー・カーストの人々の
伝統的職能を生かした支援プロジェクトについて、
その効果や問題点、現状を考察したものです。
こちらからPDF版をお読みいただけます。

修論_大道芸人カーストの日常15.8版

——–目次———

デリーのスラムに暮らす大道芸人カーストの日常
(原題:グローバル化の中の都市貧困層と自立支援プロジェクト
デリー現地NGOの思惑と伝統的フォーク・パフォーマーの諸実践)

序章  グローバル化の中の都市貧困層と自立支援プロジェクト  2

第一章 自立支援プロジェクトと「伝統」の再創造  5

第一節 NGOによる自立支援プロジェクト検討の方法論  5
第二節 市場経済化と「伝統」の創造  12
第三節 調査者の立場と調査の方法  18
第四節 各章の概要  22

第二章 誇り高き大道芸人の血 ~フォーク・パフォーマーの現在 24

第一節 フォーク・パフォーマーの現状 24
第二節 デリーの都市スラム問題とNGO  27
第三節 最も有名な大道芸人のスラム 調査対象の概要  39

第三章 モテなさそうなインテリを見下す ~現地NGOとパフォーマー 50

第一節 「伝統」の創造と消費  50
第二節 「その人はもう死んだよ!」 外部者を引きつける戦略 60
第三節 恵まれない環境の強調 スラムイメージの創造 76
第四節 パフォーマーとNGOスタッフ間の「断絶」 86

第四章 あの日々は夢だった…… グローバル化と自画像形成 100

第一節 「俺はアーティストだ!」伝統の継承者という自画像形成 100
第二節 彼女にならない?で仕事ゲット 愉しみを求める生活実践 111
第三節 不完全な自尊心と女性の囲い込み 131

終章 「文化活動を通じた国際協力」の現状と可能性 142

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いつか読みやすい形に書きなおしてどこかに公開したいと思っていましたが、いつまでたってもそんな作業にとりかかれず、どんどん情報が古くなってしまうので、思い切ってここで一度、公開してみることにしました。
論文としても未熟、読み物としても未熟なものではありますし、12年前の調査に基づく情報ではありますが、インドの都市で「不可触民カースト」として生きる人たちの言葉の記録という意味では、興味のある方にとって少しはおもしろみがあるかもしれないと思います。
社会学系、研究関係の方からみたらツッコミどころ満載かと思いますが、一つの記録として公開しているということで、どうぞやんわりとした目でご覧ください。
同じカースト内で親に決められた結婚をすることが多い彼らの生々しい言葉は、みなさんにとってどう感じられるでしょうか。NGOのインド人高学歴ソーシャルワーカーから“支援”をうけている彼らが腹の底で思っていることなど、強いなあと思うと同時に、ちょっと残念に感じられるかもしれません。

とはいえ、これらは当時、日本人の学生で女性という立場の私が見聞きすることのできた限りの情報であり、彼らもその対象に合わせて語っていることだったのかもしれないということを、明記しておきたいと思います。

今回これを公開するのは、これから自分がインド関係のプロジェクトに本腰を入れていくにあたって、自分がなにをやっていたのかを紹介しておくためです。
それと同時に、あの頃、自分たちの抱える問題を知ってもらうためならばと、時間を割いていろいろなことを教えてくれたコロニーの人たちに対し、これは公開しなくてはならないと思うからというのもあります。
(もちろん母校の図書館には一部製本した論文がおさめてありますが、わざわざ探し出して読む人はなかなかいないでしょう)
タイトルや見出しだけは、論文のときから改訂し、内容がわかりやすいようにしておきました。
ちょっと興味があるなと思うところだけ、つまみ読みしていただければと思います。
*2003年の冬から2004年の春にかけておこなった調査に基づきます。
※急遽タテ書きフォーマットに変更したので
一部読みにくいところがありますがご了承ください。

♣序章~第一章 
“発展途上国”の自立支援プロジェクトについての先行研究を、
当時の私が必死こいてまとめている章です。
すでに“業界的”には古い研究ばかり挙げているでしょうし、
そのうえ読んでもつまらないと思いますが、万が一ご興味のある方はこちらを。
→2ページ
(ただ、17ページの調査者の立場というところについては、
ライターとしての今の姿勢に通じる考えを記してある、かも)

♣第二章
一般的な、インド、ラジャスターンの大道芸人カーストというものの情報や、
デリーの都市スラムに関する先行研究、調査をしたスラムの概要です。
これまたつまらないと思いますのでよろしければざっと読んでみてください。
→24ページ

♣第三章
彼らが仕事を得るために必死でおこなっている戦略を紹介します。
それにしてもこれを読むと、誰かのために良かれと思ってやっていることが
実際どう捉えられているのか、疑心暗鬼になってしまうかも……。
でも、知る必要があることだとも思います。
→50ページ

♣第四章
海外のフェスティバルで五つ星ホテルに泊まったあと、スラムに帰ってくると、
あの日々は夢だったのかと泣けてくるというオッサンの声をたくさん聞きました。
同時に外国人の女の子と遊び放題で、
なんて奴らだ…とあきれるほどのオッサンの声もたくさん聞きました。
そんな生々しい発言たちを、妙に真面目に分析した章です。
→110ページ
彼らの、見合い結婚VS恋愛結婚についての言葉は、
111ページ「彼女にならない?で仕事ゲット」に集めてあります。
ちなみにここで予言しているとおり、10年がたった今、
ごく少数ながら、外国人と最初の結婚をする子が出てきました。

♣終章
むりやりまとめた結論です。必死だったなあ。
→142ページ


(2015年の再訪時に撮った写真)