小林愛実さんリサイタル&情熱大陸

小林愛実さんのオール・ショパン・プログラムによる
リサイタルが行われるようです。
しかも紀尾井ホールという素敵アコースティック空間!

2015年12月10日 (木) 19:00 紀尾井ホール

【ショパン・プログラム】
ロンド 変ホ長調 op.16
プレリュード 嬰ハ短調 op.45
ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 op.35 「葬送」
舟歌 嬰へ長調 op.60
ノクターン 嬰ハ短調op.27-1
エチュード ホ短調 op.25-5
エチュード イ短調 op.25-11「木枯らし」
バラード第1番 ト短調 op.23
ポロネーズ第6番 変イ長調 op.53「英雄ポロネーズ」

小林愛実さん、今回のショパンコンクールでは惜しくも入賞は逃しましたが、
ワルシャワでの聴衆からの人気も高く、
ファイナルの堂々としたコンチェルトの後は会場を大きく湧かせていました。
指揮者のカスプシェックさんにもインタビューをしたのですが、
彼女は才能がありプロフェッショナルだと、印象に残ったソリストとして名前を挙げていました。

結果発表のあとは落ち込んだようですが、
その翌々日にゆっくりお話を聞いたときにはもう、
「これでまたいろいろ勉強する時間がとれると思って!」と、
前向きな考えを取り戻していて、強いな…と思いました。

私は彼女の演奏は、
CDデビューしたくらいの若いころのものを録音で聴いたことしかなかったので、
今回、大人になった彼女の演奏を生で聴く機会を持てたこと、
それからあの明るく強いキャラに接することができたことは、
ちょっと変な言い方かもしれませんが…大きな収穫でした。
一音インパクトな生音、音楽を大きくとらえた気風のいい表現。
日本にも、こういう子がいるんだなぁと…。
あの緊張の中、それをドーンと出せるところなど、
さすが子供の頃から大舞台を踏んでいるだけあります。

ところで以前ツイッターかなにかで、
愛実さんのマズルカを聞いた後となりのポーランド人評論家氏が
「ボクは彼女が誰に習ったかすぐわかったぞ!審査員の中の誰かだ!」
と言ったことを紹介しましたが、その後、愛実さんご本人に聞いたら、
「え、誰ー!?誰にも習ってないんだけど!」と言っていました。…うける。
いずれにしても、弾き始める前からクイクイッとマズルカのリズムをとって
演奏に入るあの感じは、とても印象に残っています。天然で体得したのか。

ところで、思い起こせば9月の中旬ごろ、
兵庫芸術文化センター管弦楽団の定期公演のソリストをつとめた彼女と、
リハーサル日の楽屋で初めてお会いしていました。
たまたま、打ち合わせで兵芸に行っておりまして。

もうすぐショパンコンクールが始まるというのに
ベートーヴェンの協奏曲の本番(しかも初めて演奏する曲)で、大変そうでしたが、
それも見事にこなし、同PACとのツアー3公演でショパンの協奏曲を弾いてからの
ワルシャワ入りだったようです。

この時を思い起こして感じるのは、それから約1か月半後、
ショパンコンクールの全ステージを終えたあとになったら、
彼女のショパンやショパンコンクールについて話すことがぐっと変化したということ。
準備の期間も含めて、どんどんショパンを知っていったと言いますが、
コンクール中、ワルシャワの空気を吸い、練習の前に聖十字架教会に通い、
ショパンのことを毎日考え、あのステージに立つうち、
どんどん心境が変化していったようです。
審査員の海老彰子さんも、4月の予備予選のときはちょっと心配だったけど、
秋になったらぐっとショパンらしい演奏をするようになって
驚いたとおっしゃっていました。
ショパンコンクールに出るという経験がピアニストに与える影響はすごいんですね。
それは、結果を超越した意味で。

P1000771

さて、そんな小林愛実さんのコンクール挑戦の様子が、
11月8日(日)23時放送の「情熱大陸」(TBS系)で放送されるそうです。
コンクールのライブ配信では、
背中をバシィっと叩かれてステージに出ていく様子が見られたと思いますが、
これを叩いていたのはこの番組の方だったそうです。
「いつも、そのときいる人に叩いてもらっていて、
強く叩いてもらわないと意味がないんだけど、今回は特に強かった」とは、
愛実さんの談。
どんな番組になっているのか楽しみです!

続いて、アヴデーエワ来日公演

やっぱり5年前すごかったよなぁ…からの、
前回ショパンコンクール入賞者の来日情報。
続いては、ユリアンナ・アヴデーエワの公演です。

アーク・ノヴァへの出演、
そして、ソヒエフ指揮、ベルリン・ドイツ響との共演のため、ただいま来日中。
曲目はベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番。
楽譜を綿密に読みこんだ、かっこいい演奏に期待できそうです。

◇ベルリン・ドイツ交響楽団
10月31日(土) 18:00 北九州/アルモニーサンク 北九州ソレイユホール
11月1日(日) 15:00 宮崎/メディキット県民文化センター
11月3日(火・祝) 14:00 東京/サントリーホール

東京公演の翌日4日には、代官山の蔦屋書店Anjin で、
トークと演奏による50名限定プレミアム・イベントもあります(既に完売!)。
実は自分、このトークの聞き手をつとめることになっています。
そのうえその翌日には某誌のためのインタビューもあり。
むこう1年でお話を聞くのは6回目くらいになるような気がするので、
いい加減「Youに話すことはもうナイヨ!」と言われそうな気もしないでもありませんが、
めげずにつっついて、いろんなユリアンナを引き出してみたいと思います。

ちなみに一番最近のインタビュー内容は、
件の「家庭画報」ショパンコンクール特集内でご紹介します。

優勝した時の思い出として、発表があった瞬間、
人が波のように押し寄せて怖かったと言っていましたが、
そのときの教訓もあってか、今回はファイナリストを前に集めていましたね。

あの発表の現場って、みんなが素の表情を見せる、
コンクールの中で一番ドラマティックな瞬間の一つでもありますね。
2005年はブレハッチが顔を両手で覆って喜んで、
お母さんと抱き合っていたのも印象的でした。
その前の2000年のときのことは映像でしか知りませんが、
優勝したユンディを3位になったコブリンがかつぎあげていましたよね。
コブリンレベルだと自分も優勝狙っていたでしょうが、
よくああいう行動ができたもんだ。
今回だったら、アムラン君がチョ君をかつぐとか?
…なかなか起きないことだよなあ。
(いずれにしても、逆は物理的に無理そう)

コンクールによっては、ステージ上の授賞式の中で発表することもありますね。
…と思ったところで、今ふと、このタイプの結果発表の場合、
「某有名教授はいつもこらえきれず、出てきた瞬間必ず優勝者をガン見するから、
その人が審査員にいるときは発表前に優勝者がわかる」
という噂を聞いたことを思いだしました。
ユリアンナとは、全然関係ないけど。

トリスターノが考える麺に合う音楽

埼玉アーツシアター通信、11月29日彩の国さいたま芸術劇場
「ピアノ・エトワール・シリーズ アンコール!」についての
トリスターノさんのインタビューが公開されました。(16ページ目です)
IMG_20150717_022633

演奏会のプログラムについてのお話はじめ、
「マタイ受難曲」とトランスの話、音への感性を培った幼少期の話など、
いろいろおもしろいトピックスはあったのですが、
今回やっぱり一番気になったのが、ラーメン屋オープン計画の話です。

「今実現したい夢は?」と、けっこう真面目に尋ねたことに対しての返答が、
「ラーメン屋を開きたい。あ、ごめん、音楽の話が良かったよね?」だったわけで、
いや、いいですよラーメンでもと言って話を聞き続けてみると、
バッハへの想いと張るレベルで、ラーメンについて熱く語りはじめました。
もうレシピもあって、何年か前に一度本当に店を出す寸前までいったのに、
同じエリアで先を越されて機を逸し、今は次のチャンスを狙っているのだとか。

調子にのって、「店ではどんな音楽を流すの?バッハとか?」と聞いてみたら、
「そうだね…確かにそれはいいかも。何か麺に合う音楽を流すよ。
まず、J-POPではないな。僕の音楽でもない。なんだろう…」
と真剣に考えこみはじめたので、
次回会うときまでに考えておいてくださいということで話を切り上げました。

そんなトリスターノさん、11月の公演では、
自作とバッハを組み合わせ、はじめとおわりがつながって
無限ループのように長く続いていくようなプログラムだそうです。
まさにラーメン…。
想像を超えるいろいろな展開を見せてくれそうです。必聴です。
ところで余談ですが、いつかトリスターノさんとタブラのユザーン君とのデュオが
実現したらいいのになと思っています。
お互いの意志は確認済みなので(多分両想い)、
もう一押しなんだけどなー。

「Road to 仙台コン」ボランティアさん事情のこと

クラシックソムリエ協会とのコラボレーションで連載されている、
「Road to 仙台コンクール」
クラシックの基礎知識やコンクールを聴く楽しさを紹介する内容で
記事を書いています。

今月のトピックスは、「世界のコンクールのボランティアさん事情」
仙台や浜松はもちろん、今や世界のほとんどのコンクールが
ボランティアさんの支えで成り立っていると思いますが、
今月の記事では、中でもそのスケールがハンパない
ヴァン・クライバーンコンクールの事例などを紹介しています。

それで、記事をまとめながら、これまで行ったコンクールのなかで、
チャイコフスキーコンクールやショパンコンクールでは、
ボランティアさんの存在を見ることがほとんどなかったな…とふと気が付きました。
しいて言えば、学生インターンのような人たちくらい。

記事の中で、プロの「ドアおばさん」の話を紹介していますが、
彼女らの威圧感は本当にすごいです。
ただ、顔見知りになれば融通を聞いてくれる、優しい一面もあります。
(仲良くなると、遅れてもソーッと入れてくれることがある)
前の回のコンクールから5年経って、
まったく同じドアに同じおばさんが座っているのを見て、
すごく懐かしい気持ちになったこともありました。

ショパンコンクールやチャイコフスキーコンクールでは
なぜボランティアの活動が見られないのか。
あれだけのコンクールになると国からの予算も出て
ボランティアを集める必要ないのだろうとか、
そもそも、チケット争奪戦となる大コンクールだけに、
多くのコンクールのように入口チェックをボランティアさんに
(どうしても、高齢の方や物腰おだやかな女性となることが多いので…)
任せるわけにはいかないのだろうとか、いろいろ思い当たる理由はありました。

で、今回記事を書くにあたって、過去に、ヴァン・クライバーン財団事務局長、
そして2011年チャイコフスキーコンクール事務局長を務めたロジンスキさんに
ちょっとその辺のことを聞いてみたら、こんなお返事が。

「私も、チャイコフスキーコンクールでもクライバーンと同じように
ボランティアを集めることができないか提案してみたんです。
でも、ロシアのスタッフからかえってきた答えは、
“ロシアにはボランティアという概念が皆無に等しいから無理”というもの。
共産主義時代、そもそもみんながある意味ボランティアの感覚で働いていたし、
当時は、“みんなお金を払われているふりをして、働いているふりをしているだけ”
…という冗談があったほど。
結局、ロシア在住の外国人や英語クラスの学生が少し集まっただけでした」

そうなのか…。
とはいえ、ソチ・オリンピックなどでは
ものすごい数のボランティアが活躍していたというから、
最近の若い人たちの感覚はどんどん変わってきているかもしれません。
どうなんでしょうかね。でも、なるほどなーと思いました。

さて、この連載は、来年の仙台コンクール開催まで続く予定です。
時々覗いてみてください。

エフゲニ・ボジャノフのインタビュー

ヤマハPianist Lounge、ボジャノフのインタビューがアップされました。
この春、3年ぶりの来日時に取材したものです。
(佐渡さん指揮兵芸との全国ツアー、LFJの公演に出演)
良く考えると、対面してまともにインタビューをするのはかなり久しぶりでした。
写真もなかなかワイルドな感じでおもしろいので、ぜひご覧ください。

話を聞くと、やっぱりこの方の思考回路はスゴいなと思うわけですが、
(頭いいんだか、ちょとおかしいんだか、でもまあやっぱり頭いいのね、という)
前から謎に思っていた、
本番近くでも好んで電子ピアノで練習することの理由についても
今回のインタビューでは聞いています。
そこには彼なりの合理的な理由があったのでした。
あるピアニストさんが以前、
練習中は不完全な音楽を自分に聴かせているわけだから
練習時間は短ければ短いほどいい、と言っていたけど、
似た発想から全く違うところに着地したパターンですね。

ヤマハのサイトには初登場だったので、改めて幼少期の話なども聞いています。
全然合う先生がいなくて次々と違う先生についたというくだりでは
「でもこの時の経験が良い人間と悪い人間を判断する能力を養った」、ですって!
(ボジャノフの記事を初めて読む方から勘違いされるとなんかなーと思って
Pianist Loungeには書かないでおきましたけど)
相変わらずの強気発言。しびれますね。
いや、あなたがちょっと大変な子供だったのでは…と心の中でつっこみましたが、
もちろん言いませんでした。
(ところで当サイトの記事を読んでいる方の多くは
ボジャ氏のキャラを理解されているという前提で、いろいろ書いています。
一応お伝えしておくと、彼は多少言うことが乱暴なときもありますが、良い方です)

もうひとつ、Pianist Loungeでは書かないでおいた、
しびれる回答を紹介しましょう。
以前、雑談の中で尋ねたことがあったのですが、
改めてオフィシャルなインタビューで聞いてみたくて、この質問をしてみました。
演奏家というのは、批評などでもとにかくいろいろなことを言われると思うけど
(特に彼のような個性的演奏の場合はしょっちゅうでしょう…)
どうやって乗り越えている?という。

「君は、評論家からここが悪いと言われたからって、
自分の演奏を変えている良い演奏家を誰か知っているか?
俺は知らない。そんなもの乗り越える必要すらない」

…しびれますねー。

いや、本当は気にしたり一人怒っているときとかもあると思うんですけど、
期待を裏切らないこの自信満々発言にしびれました。

 

ところで記事の中でも紹介されている、かの有名なマイピアノ椅子ですが、
今回、新調されていました。
なんとファツィオリ社製だそうです。
さすが、なんでもつくっちゃうパオロ社長。

IMG_20150610_155817

座面の裏に4本の脚が収納できて、
ピッタリサイズの鞄でそのまま運べるようになっています。
へーすごいね、写真撮らせてといったら、
ボジャ氏はその様子を穏やかなドヤ顔で眺めていました。

今回の来日中、ソロリサイタルはLFJの1公演のみでしたが、
相変わらず濃厚な音楽で心をわしづかみ。クセになる音楽健在でした。
次の来日も楽しみです。いつかなー?

6月のG-Call 公演はおまけつきです

今日は、6月、7月のG-Callサロンコンサート公演が
おまけつきでやたらお得だという件をご紹介しようと思います。

いずれも参加費3,500円(税別)で先着50名様に
『クラシックソムリエ検定シルバークラス対策公式テキスト』を1冊プレゼント、
しかもいつもどおり、ワンドリンク付き、
さらに演奏家が下記のとおりのすばらしいラインナップ!
…という。(ちなみにテキストは通常価格、2,000円です)
※ただしプレゼントは対象イベント通じておひとり1冊までだそうです。

サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデンプレコンサート
クァルテット・エクセルシオ
6月5日(金) 19:00~

宮谷理香 ピアノ・リサイタル Vol.2
6月12日(金) 19:00~

下田逸郎「さしむかいライブ」Vol.2
6月26日(金) 19:00~

前田朋子 ヴァイオリン・リサイタル
7月17日(金) 19:00~

今回は、初回となる6月5日の演奏会をご紹介したいと思います。

6月のサントリーホール チェンバーミュージック・ガーデンの、プレコンサート。
登場するのは、日本で希少な常設の弦楽四重奏団クァルテット・エクセルシオです。
( それにしても↓ チェンバーミュージックガーデンのチラシは毎年きれいだよなぁ。
表紙が楽器の形にカットしてあって、下の花柄が見えるようになっている)
IMG_20150528_001120

クァルテット・エクセルシオは、
以前サントリーとクラシックソムリエ協会のコラボで開催された
ウイスキーの響を味わう「ハーモニー・ラウンジ」というイベントでも、
洗練されていながらゴリゴリにかっこいい演奏を聴かせてくださいました。

今回のプログラムは前半に有名曲の聴きどころを集め、
後半でドヴォルザークどかーんという内容。
弦楽四重奏って近くで聴くとものすごく新鮮な刺激がありますから、
G-Callサロン、ぜひお早めに来て前の方の席をゲットするのが良いと思います。
4人の奏者の呼吸がダイレクトに伝わる臨場感に、
ホールで響く演奏を聴くのとはまた違うおもしろさがあるはず。

wwcc7779[1]
それでこちら、先の2月に発売された
スメタナの「わが生涯より」とヤナーチェクの「クロイツェル・ソナタ」という、
作曲家の心の底の何かが浸み出してしまっている系の
ヘビーな作品を収録したアルバム。
全員が職人でありアーティストであるという気配とともに、
絶妙な音楽のまとまりを生んでいて、安心して聴いていられる質の高い演奏です。

やはり室内楽というのは、演奏家同士がどんな信頼関係のもと
どんな気持ちでやっているかというのがもろに演奏に出ますからね…。
結成20年という年季の入ったエクセルシオの演奏は、特別です。

ちなみに、最新盤はピアノの近藤嘉宏さんが加わった、
ブラームスとシューマンのピアノ五重奏曲の録音だそうです。
もうそろそろ発売なのかな?

というわけで、
クラシックソムリエ検定のテキストが付いてきちゃう的な一連の公演から、
初回となるクァルテット・エクセルシオの情報を紹介しましたが、
続く公演も、宮谷理香さんや前田朋子さんなど、続々実力派が登場しますので、
ぜひこの出血大サービスなチャンスをお聴き逃しなく。

小山実稚恵さんのシューベルト

以前、シューベルトを取り上げるリサイタルについてのインタビューで、
ピアニストのアオヤギ氏が、
「昔学生のころ、友達が、シューベルトを弾きたくなると
死期が近いらしいよっていってたんですよねー」とおっしゃっていました。

私も昨年あたりから、
やたらめったらシューベルトの音楽を“集中して”聴くことが好きになってきて
(ふわっと聴くのは昔から好きだったけど、なにか人生の謎の答えを
見つけようとしながら聴きいるというか、我ながら少しヤバそうな感じの聴き方)、
思いがけず、実はもう晩年を迎えているのかもとビクッとするときがあります。

小山実稚恵さんの最新のシューベルトのアルバム
優しくて、大切に演奏されていて、とてもすばらしい録音です。
ああ、なんて美しいんだろうと思って聴いていて、
ふと気が付いたら、なんかもう、
あの世に行ったら楽なんだろうなみたいな気分になっていて、
うわ!あぶなーい!まだまだ、戻ってきて自分!というような、
そんな気持ちになります。
なかなか、意味のわからない感じの説明ですみません。
でも、この何とも言えない気分にさせられるのがまた心地よく。
辛いような、幸せなような、整理のつかない気持ちになるのです。

このアルバムの件で、先日小山さんにインタビューをさせていただきました。
現在発売中のCDジャーナルに掲載されています。
DSC_0723

小山さんのシューベルトを聴いて感じたその複雑な心境について、
直接、小山さんに尋ねてみました。
どうしてあの音楽を聴くとそんな気持ちにさせられるのか、答えが知りたかった。

すると、小山さん、
「わかるわぁ~。本当に、こんな音楽、他にないのよねぇ~。
なんだろう、もうあの、優しいツブツブがあるところとか。
不安のシャリシャリがあるところとか。なんだか本当にいいわよねぇ」

…ああ、すごく気持ちがわかるし、何のことを言っていのかもわかる。
だけど、おっしゃっていることは私以上に謎に包まれている…!

そんな小山さんが大好きです。
優しくて、お話しぶりはふわふわしているんだけれど、内容には芯が通っている感じ。

今年はデビュー30周年ということで、
ここまでのご活動を振り返っての今のお気持ち、
また、今新たに東日本大震災の被災地のために始めるプロジェクトなどについても、
語ってくださいました。インタビュー記事、ぜひ、ご覧ください。

 

新井×ユザーン五反田G-Call公演、予約受付終了しました

新井孝弘×ユザーン「インド古典音楽ライブ」も、
ムンバイ行きっぱなし新井くんが帰国する春に開催するようになって、今年で4年目。
この季節の2人のツアーもだいぶ定着してきたようで、
4月23日の五反田・G-Callクラブサロン公演は満席につき、予約受付終了となりました。
すでにふたりの全国ツアーは始まっています。
各地でたくさんの公演がありますので、お近くの会場を探してみてください。

ヨルタモリ効果でユザーン君の一般からの認知度がますますあがり、
「今度新井君とユザーン君という人のインド音楽ライブをやるんだけど…」
という話題からの、どうも話がかみ合わないと思ったら1名インド人だと思われてる、
というめんどくさいパターンもめっきり減少しました。
当日は混雑が予想されますので、ご了承のほどよろしくお願いします。

すでにご予約のみなさま、当日はG-Callクラブサロンという素敵な空間で、
お飲みのもの持ち込み自由、アットホームな雰囲気で楽しんでいただくこととなると思います。
(インドっぽい気配皆無の洗練されたサロンです。
このサロンでは普段から、クラシック、ジャズ、落語、おいしい食材の試食会など
かなりいろいろな催しをしていますので、チェックしてみてください。
扱っているお取り寄せ食材のクオリティも、相当高いです)

また、椅子席の他に、ステージまわりにはマット的なものを敷いて、
床に座る形でご覧いただけるエリアも設ける予定でおります。
あまり気の効いたマットが用意できなさそうなので、
床席エリアご希望でおしりのコンディションが気になる方は、座布団などお持ちください。

当日は、新井くんがムンバイから持って来てくれたインドならではのおみやげ、
「甘くないマンゴーの飴」を先着約100名さまにお配りする予定です。
新井君においしいのか尋ねたところ、「甘酸っぱい感じの味」とのことで、
おいしいという明確な答えはありませんでしたが、ぜひお楽しみに。

ところで、本当はコンサートの宣伝のためにムンバイで撮影した
新井君、公演に寄せてのコメントを、今更ながらアップしました。
うっかりしていたら満席になってしまいましたが、
ユザーン君との共演に寄せての想いなど意外と真剣に語っていますので、
ぜひご覧ください。
後ろにぶら下がっているズボンをどけたほうがいいよとアドバイスしなかったことを、
心から後悔しています。

お医者さんの思い出、そして上杉春雄サロンコンサートの話

子供のころから通っていた皮膚科のおじいちゃん先生がめちゃくちゃ怖かったので、
今も皮膚科で診てもらう時は、必要以上におびえます。
例えば「治った」という言葉をうかつに使うと、即刻怒られる。
(このまえの薬[ステロイド入り]を塗ったら治ったんですが…と言うと、
「そんなのは治ったって言わない!勘違いされちゃこまるんだよ!」と叱られる)
アトピーっぽいところがカサカサするので保湿クリームをぬったなどと言おうものなら、
大馬鹿扱いです。
(肌が炎症起こしているところに余計なものしみこませてどうする!とのこと)
それでも地元では名医として知られていて、実際大変お世話になりました。
今の自分があるのは先生のおかげといっても過言ではない。(いや、過言かな)

大人になって、引っ越すたびに近くの病院に行くということが増え、
お医者さんていろんな人がいるなー、
しかし最近、余計な事をしゃべる先生って減ったのかなと感じていました。
病院で怒られることがあまりなくなりましたね。
昔はしょっちゅうあちこちでひどいこと言われてた。

で、先日、近所の初めての皮膚科にお世話になりました。
街の小さな診療所といった感じで、なんだか暇そうでした。
未だ皮膚科の先生を前におびえる癖はぬけず、
ものすごく言葉を選んで自分の症状を説明し、
できるだけ怒られないように、おそるおそる自らの日常習慣を伝えている自分。
しかしこの優しい先生は、わかるようなわからないようなたとえ話で、
アトピー的体質との付き合い方を説明してくれます。
「僕はよく患者さんに言うんだけど、アトピーの人ってのはね、
塗装の弱い外車みたいなもんなの。
丁寧にメンテナンスしないとすぐぼろぼろになっちゃう。
だからあなたね、自分が高級な外車だと思って、丁寧に皮膚の手入れしなさい」

はー、アトピー体質に自尊心を与えつつ、
がんばって気長にケアすれば大丈夫だと希望を与える作戦だな…。

なんだかいい声の先生で、暇そうなのに、ちょっと楽しそうでした。
あとでふと、この先生は患者との対話を楽しんでるんだろうなと思いました。
いろいろうんちく言いながら、自分の持ちネタがウケるのを見て喜んでる感じ。

それで思い出したのは、あの怖かった子供の頃の皮膚科の先生も、
不器用ながら、患者にちょっかい出して
リアクションを見るのを楽しんでいたんだろうなあということ。
まあ、いろんなお医者さんがいると思いますが、
みなさん患者の症状が良くなったらいいと思いながら、
いろいろな形で日々を過ごしているんですよね。
ブラームスの母がブラームへの手紙に書いている言葉に
「自分のためにばかり生きて、人のために生きない人たちは、半分しか生きていないのです」
というのがあって、なぜかすごく印象に残っているのですが、
医者という仕事を選ぶということは、
確実にある程度は人のために生きることになるわけですからね。
なんかすごい仕事だなと思います。
お友達のお医者さんとか、普段あんな感じなのに、本当はえらいんだよなと
心から思っています。

で、この話が何につながるかというと、
4月18日(土)、上杉春雄ピアノリサイタル@G-Callクラブサロンです!!
上杉さんといえば、かの有名な二足のわらじピアニスト。
普段は北海道で神経内科のお医者さんをしていらっしゃいます。
音楽と医療、ものすごい両極端な方法で他人になにかをもたらしている人です。
何度かインタビューなどさせていただいていますが、お話を聞き、演奏を聴くと、
医者であるということとピアニストであるということが、
相互に、見事に良い影響を与え合っているのだろうなとつくづく感じます。
(医者のほうにピアノが役立っている場面は、直接見たことはありませんが)

今回のプログラムは、バッハのゴルドベルク変奏曲です。
平均律の全曲演奏会シリーズなどもされている上杉さんのバッハには、定評があります。
サロンコンサートですから、おそらく、
脳みそフル回転でついていくと
ものすごい発見がもたらされるすばらしいトークも聞けると思いますので、
来週土曜日の午後は、ぜひ会場に!

遺跡が似合う男、ロマノフスキー

ロマノフスキーの少々久しぶりの来日公演、今週末からスタートします。

1月17日の彩の国さいたま芸術劇場でのリサイタル、
1月21、22日のノセダ指揮N響との共演(ラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲)、
そして1月23日の紀尾井ホールでのリサイタルと続きます(「公演によせて」書いてます)。

img20150111_134249

来日に合わせて、新譜の日本盤もリリースされました。
収録されているのは、ラフマニノフのピアノ・ソナタ第1番、第2番。
ライナー書かせていただいてます。
どこか遺跡的な場所で遠くを見つめるロマさま。
つくづく、遺跡とロングコートが似合う男です。
ブックレットの中には、
この遺跡風の場所の岩の上で物思いにふけるロマさまの姿が収められています。

欧文のタイトルは、「ロシアン・ファウスト」。
ソナタ1番が、当初、ゲーテのファウストからインスピレーションを受けて着手されたことに
由来しています。
これが、かなりいい演奏です。聴けば聴くほど、しみじみ良い。
ソナタの1番など、ところどころ涙出そうになります。

私がロマさまの生演奏を初めて聴いたのは
2011年のチャイコフスキーコンクールのときでしたが、
あのとき本選で弾いたラフマニノフのピアノ協奏曲第3番も、
聴いているうち、微笑みながらも涙が出てきて「もお、やめてよ~」と言いたくなる
幸せだけどなぜか哀しい、すばらしい演奏でした(言葉でうまく説明できない、この感覚)。
この録音からもそれに近いものを感じます。
やはりこの方とラフマニノフは、何か深いところで通じるものがあるのでしょう。

N響との共演ではラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲を演奏してくれますから、
かなり楽しみですね。しかも指揮はノセダさん!
先にガヴリリュクがソリストで出演した定期公演も、すばらしかったです。

一方、これだけロマさまのラフマニノフを押しておきながら、
リサイタルプログラムにはラフマニノフが入っていないんですけど、心配はご無用!
ベートーヴェンのソナタ14番「月光」、30番、
そして後半はピアノ・ソナタ第2番を含むショパンづくしと、相当濃い内容です。
とくに「月光」は前回の来日リサイタルでも演奏しているんですよね。
一体ロマさまはなぜこんなにも執拗にこの作品にこだわるのか…
演奏を聴いてみれば、わかるかもしれない。
とにかく、楽しみな公演です。