お医者さんの思い出、そして上杉春雄サロンコンサートの話


子供のころから通っていた皮膚科のおじいちゃん先生がめちゃくちゃ怖かったので、
今も皮膚科で診てもらう時は、必要以上におびえます。
例えば「治った」という言葉をうかつに使うと、即刻怒られる。
(このまえの薬[ステロイド入り]を塗ったら治ったんですが…と言うと、
「そんなのは治ったって言わない!勘違いされちゃこまるんだよ!」と叱られる)
アトピーっぽいところがカサカサするので保湿クリームをぬったなどと言おうものなら、
大馬鹿扱いです。
(肌が炎症起こしているところに余計なものしみこませてどうする!とのこと)
それでも地元では名医として知られていて、実際大変お世話になりました。
今の自分があるのは先生のおかげといっても過言ではない。(いや、過言かな)

大人になって、引っ越すたびに近くの病院に行くということが増え、
お医者さんていろんな人がいるなー、
しかし最近、余計な事をしゃべる先生って減ったのかなと感じていました。
病院で怒られることがあまりなくなりましたね。
昔はしょっちゅうあちこちでひどいこと言われてた。

で、先日、近所の初めての皮膚科にお世話になりました。
街の小さな診療所といった感じで、なんだか暇そうでした。
未だ皮膚科の先生を前におびえる癖はぬけず、
ものすごく言葉を選んで自分の症状を説明し、
できるだけ怒られないように、おそるおそる自らの日常習慣を伝えている自分。
しかしこの優しい先生は、わかるようなわからないようなたとえ話で、
アトピー的体質との付き合い方を説明してくれます。
「僕はよく患者さんに言うんだけど、アトピーの人ってのはね、
塗装の弱い外車みたいなもんなの。
丁寧にメンテナンスしないとすぐぼろぼろになっちゃう。
だからあなたね、自分が高級な外車だと思って、丁寧に皮膚の手入れしなさい」

はー、アトピー体質に自尊心を与えつつ、
がんばって気長にケアすれば大丈夫だと希望を与える作戦だな…。

なんだかいい声の先生で、暇そうなのに、ちょっと楽しそうでした。
あとでふと、この先生は患者との対話を楽しんでるんだろうなと思いました。
いろいろうんちく言いながら、自分の持ちネタがウケるのを見て喜んでる感じ。

それで思い出したのは、あの怖かった子供の頃の皮膚科の先生も、
不器用ながら、患者にちょっかい出して
リアクションを見るのを楽しんでいたんだろうなあということ。
まあ、いろんなお医者さんがいると思いますが、
みなさん患者の症状が良くなったらいいと思いながら、
いろいろな形で日々を過ごしているんですよね。
ブラームスの母がブラームへの手紙に書いている言葉に
「自分のためにばかり生きて、人のために生きない人たちは、半分しか生きていないのです」
というのがあって、なぜかすごく印象に残っているのですが、
医者という仕事を選ぶということは、
確実にある程度は人のために生きることになるわけですからね。
なんかすごい仕事だなと思います。
お友達のお医者さんとか、普段あんな感じなのに、本当はえらいんだよなと
心から思っています。

で、この話が何につながるかというと、
4月18日(土)、上杉春雄ピアノリサイタル@G-Callクラブサロンです!!
上杉さんといえば、かの有名な二足のわらじピアニスト。
普段は北海道で神経内科のお医者さんをしていらっしゃいます。
音楽と医療、ものすごい両極端な方法で他人になにかをもたらしている人です。
何度かインタビューなどさせていただいていますが、お話を聞き、演奏を聴くと、
医者であるということとピアニストであるということが、
相互に、見事に良い影響を与え合っているのだろうなとつくづく感じます。
(医者のほうにピアノが役立っている場面は、直接見たことはありませんが)

今回のプログラムは、バッハのゴルドベルク変奏曲です。
平均律の全曲演奏会シリーズなどもされている上杉さんのバッハには、定評があります。
サロンコンサートですから、おそらく、
脳みそフル回転でついていくと
ものすごい発見がもたらされるすばらしいトークも聞けると思いますので、
来週土曜日の午後は、ぜひ会場に!