第1次予選結果発表

ショパンコンクール、第1次予選の結果が発表されました。
ここでは、78名のコンテスタントから、一気に約半数に絞られます。今回は、予定されていた40名より3名多い、43名が選ばれました。

最後の奏者、有島京さんの演奏が終わったのが、10月7日の20:30ごろ。発表予定時刻は21時~22時というアナウンスがありましたが、21時すぎの時点でホワイエにはまだ人がまばらです。アナウンスを誰も信用しちゃいないという、ショパンコンクールあるある。
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とはいえ、22時すぎにはさすがに多くの人があつまってきました。
そして、予定からそう遅れずに結果発表となりました。
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ネットで配信されることもあってか、姿を見かけないコンテスタントも多かったように思います。
それにしても、結果待ちの様子にもコンテスタントのキャラクターが出ますね。
親御さんと一緒に静かに待っている人、友達と談笑しつつ待っている人、暗がりでひとり静かにひっそりと待っている人など、さまざま。

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こちらは後ろの方で静かに待つアムラン氏。
通過の結果発表後も、なんだかすごく落ち着いていました。

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ぬっとあらわれて、静かに立ち尽くすロマン氏(発表前の写真)。
日本のみんなが応援してるよと伝えたところ、
表情からイマイチ感情は読めませんでしたが、
多分、嬉しそうだったんじゃないかと思います。
結果は残念でしたが、また演奏を聴ける機会を楽しみにしましょう。

その他、日本でもおなじみのディナーラさんなんかは、余裕の表情でおじさんのファンにつぎつぎせがまれ写真におさまりながら待っていました。
発表前、中桐さんともお話できましたが、結果がどうでもポーランドに留学してコンクールの準備をしたこの1年は自分にとって大切な経験になったと、やりきったという清々しい表情でした。

第2次予選に進むことの決まったコンテスタントは、以下の通り。
使用ピアノについては、1次からの変更がなければ、スタインウェイ19、ヤマハ19、カワイ5だそうです。
第2次予選は、10月9日(金)現地時間10時からスタートします。

Ms Soo Jung Ann (South Korea)
Ms Miyako Arishima (Japan)
Mr Łukasz Piotr Byrdy (Poland)
Ms Michelle Candotti (Italy)
Mr Luigi Carroccia (Italy)
Ms Galina Chistiakova (Russia)
Mr Seong-Jin Cho (South Korea)
Ms Ivett Gyӧngyӧsi (Hungary)
Mr Chi Ho Han (South Korea)
Mr Olof Hansen (France)
Mr Zhi Chao Julian Jia (China)
Mr Aljoša Jurinić (Croatia)
Ms Su Yeon Kim (South Korea)
Ms Dinara Klinton (Ukraine)
Ms Aimi Kobayashi (Japan)
Mr Qi Kong (China)
Mr Marek Kozák (Czech Republic)
Mr Łukasz Krupiński (Poland)
Mr Krzysztof Książek (Poland)
Ms Rachel Naomi Kudo (United States)
Ms Kate Liu (United States)
Mr Eric Lu (United States)
Mr Łukasz Mikołajczyk (Poland)
Ms Alexia Mouza (Greece)
Ms Mayaka Nakagawa (Japan)
Mr Szymon Nehring (Poland)
Mr Piotr Nowak (Poland)
Ms Arisa Onoda (Japan)
Mr Georgijs Osokins (Latvia)
Mr Jinhyung Park (South Korea)
Mr Charles Richard-Hamelin (Canada)
Mr Dmitry Shishkin (Russia)
Ms Rina Sudo (Japan)
Mr Michał Szymanowski (Poland)
Mr Arseny Tarasevich-Nikolaev (Russia)
Mr Alexei Tartakovsky (United States)
Mr Alexander Ullman (United Kingdom)
Mr Chao Wang (China)
Mr Andrzej Wierciński (Poland)
Mr Zi Xu (China)
Mr Yike (Tony) Yang (Canada)
Mr Cheng Zhang (China)
Ms Annie Zhou (Canada)

 

第1次予選最終日を前に

あっという間に、今日(10月7日)は第1次予選最終日。
全演奏の終了予定時刻は20:00(日本時間8日AM3:00)で、そこから審査に入り、結果発表となります(ライブ配信もあると思います)。
私の知る限りの過去2回では、1次の結果が一番時間がかかっていたような気がするので、日付が変わる前に発表してくれるといいな…というところ。
ちなみに前回は、アルゲリッチが採点のやり方を間違えてやり直しているとかいう理由で、めちゃくちゃ時間がかかったような気がします。
(本当か嘘かはわかりませんが。今回は頼みますよ、ねえさん!)

さて、1次の結果発表を前に、ここまでを振り返ってみようと思います。

まずは改めて、1次の課題曲について。
指定のエチュードから2曲、指定のノクターンまたはエチュードから1曲、バラードまたはスケルツォまたは幻想曲から1曲の、計4曲を弾きます(約25分)。
つまり、技巧的なエチュードと、歌う感じのノクターン的作品と、ちょっと長めの詩的な作品、全部弾いてみせてちょうだいね、という課題です。

なにせ出場者が78人もいますから、1日に何度も同じ作品を聴くことになります。そんなわけで、アパートに帰って食事の支度などをしながらついショパンを鼻歌で歌ってしまうことになるわけですが、3日目あたりからその鼻歌の内容がなんとスケルツォとかにになってくるんですね…。
ノクターンやらバラードならまだしも、スケルツォ1番を鼻歌って…これは3日目にしてすでに末期だ、と愕然とするわけです。
いくらショパンの音楽がすばらしいとはいえ、朝から晩まで12人の演奏を聴くとなると、だんだん辛くなってきます。それでも、ときどきハッとする演奏に出会うことができるので、やっぱり聴き続けてしまうんですね。

さて、演奏順の都合などで話を聞きたいと思いながら叶わなかった方も多いのですが、ここでは、今回バックステージを訪ねることができたコンテスタントの写真などを紹介していきます。

ちなみに今回わたくし、まわりがポーランド評論家勢というエリアに座っております。
お隣はショパコン聴き続けて50年、ベテラン評論家ヤン・ポピス氏。ポーランド語はわかりませんが、(彼ら的に)演奏が微妙なときなど容赦なくザワつくので、ちょっと怖いと同時に、リアクションが興味深いです。

さて。
まずは1日目より、チョ・ソンジン君。
確か去年のルービンシュタインコンクールでも初日に弾いていて、初日づいているんだと残念そうにしていましたが、それでも、スタインウェイのピアノから他の誰より一際ダイナミックレンジの広い音を導き出し、完成度の高い演奏を聴かせてくれました。
でも実際は、ものすごく緊張していたそうです。確かにそんな雰囲気だったなと思い、「ああ、曲と曲の間にずいぶん時間をとっていたもんね」と言うと、「どうせその間に飽きちゃったんでしょ」との返し。いつの間にそんな気の効いたひねくれジョークを言うようになったんだ…!と、15歳の頃、お月様フェイスでまだ無口だった浜松コンクールのチョ君をなつかしく思い出したのでした。もう21歳だもんね、あれから6年か…。
実は来年1月の彩の国さいたま芸術劇場でのリサイタルのために、ほんの短い時間お話を伺いました。そちらの記事も、お楽しみに。

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(練習室で少しお話を聞きました。例によって顔を隠し、シャイボーイっぷりをアピール)

同1日目の最後に弾いた、ジ・チャオ・ジュリアン・ジアさん。5年前にも参加しているジュリアンさんですが、今回からイメージチェンジしていて、つやつやの髪にナチュラルメイク、オレンジのコートが素敵な感じです。カワイのピアノを自在に操り、バシィッと決める音のアタック力がすごくて、インパクトありました。

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(テレビのインタビューを受けています)

2日目の演奏者からは、小林愛実さん。
配信をご覧になった方もいらっしゃると思いますが、小柄な愛実さん、ステージにあがってから椅子がうまく下がらず、悪戦苦闘していました。
なかなかうまくいかない様子に客席にもあたたかい笑いが起こり、やっと下がった…というところで拍手が。ただ、終演後のご本人のお話によれば、「まだちょっと高さが合わなくて直したかったんだけど、拍手されちゃったからもう弾き始めないわけにいかなかった」とのこと。あらら!
何かの古い記事でショパンコンクールを受けるのが夢というコメントを見たので、今回はさぞかし気合いが入った挑戦なのかと思いきや、意外にも「直前まで考えていなくて、締め切りギリギリにやっぱり受けてみるかと思ってあわてて準備した。子供の頃はショパンコンクールって憧れていたからそう言っていたけど、もう最近はそういうわけでもなかった」と言われて、拍子抜けしました。でもそういうノリで受けていると聞いて、逆に安心(?)したような。
喋っているとあっけらかんとした、素直で楽しい女の子なのに、ステージに立つと貫禄があります。別人みたいです!

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(終演後の安心した表情。弾きやすいピアノだったと愛実さん。スタインウェイのグラナーさんが、今度は違う椅子を持ってくるねと言っていました)

そして、二日目最後に演奏したティアン・ルさん。

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今回、1次予選で唯一ファツィオリを選んだコンテスタントです。そして、5年前のコンクールをウォッチしていた方は覚えているでしょう、セミファイナルに進みながら腱鞘炎で途中棄権したユーリ・シャドリン。彼は彼女の夫です!
実はオープニングコンサートの日、シャドリンっぽい人を客席に見かけ「え…?もしかして?でもいるわけないよなぁ。ルビャンツェフみたいに未練があって来ちゃったとか…?それはないよね」(注:おなじみ、ちょっと変わったロシアのピアニスト、ルビャンツェフは、5年前、4月の予備選で落とされてしまったものの諦めきれず、10月のコンクールを見に来て、ずっとそこら辺をフラフラしていたのでした)と思い、人違いだろうと声をかけませんでした。
実は向こうも私を見かけていたそうでしたが、「あいつ月刊ショパン辞めたっていってたし、いるわけないよな」と思って、声をかけなかったとか。
そんな中、妻のティアンさんのサポートのためにシャドリン君が来ていると聞き、ようやく納得がいったのでした。(未練じゃなかったか!)
二人はともにレオン・フライシャー門下。5歳違いですが、シャドリンは奥さまの先生でもあるそうです。
この夫婦には翌日にたっぷりお話を聞きましたので、記事をお楽しみに。

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(なぜかインタビューを受けている夫)

そして、3日目のコンテスタントからは、ゲオルギヒ・オソキンス。
このサイトでも紹介した昨年のルービンシュタインコンクールで入賞した、アンドレイ・オソキンスの弟さんです。お兄さんとはまったくタイプの違う、慎重かつ超スーパー個性的、客席を全部自分のペースに巻き込む、それでいて音にものすごくこだわっている演奏を聞かせてくれました。
しかも、どこかで見たことのある、低めのマイ椅子(ファツィオリ製)。5年前、衝撃の濃厚ショパンで人々を魅了したボジャノフを思い出さずにいられません。

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演奏終了後は風のようにホールを去って行きましたが、実はこの数日前、某所で彼と話をするチャンスがありました。ステージ衣装もなかなかオシャレでしたが、私服も個性的で、「インドに長期滞在しているシャレオツな若い男子でこういう人いるな」という感じの素敵な服装。腕に巻いている赤い紐が気になりますが、「これで手元がアップになったときの映像でも僕だとわかるでしょ」と言っていました(それが目的でつけているのかは知りませんが)。
ちなみに、周囲のポーランド評論家勢は、彼が出てきた瞬間にザワザワしていました。予備選からの評判で、要注意人物となっていたのかも。

4日目のコンテスタントからは、インド部的に勝手に注目していた、カウシカン・ラジュシュクマールさん。ロンドン生まれとはいえ、明らかに南アジア系のお顔立ち&お名前だったので、ぜひお話ししたいと思っていたのでした。
自分なりのショパンを、とにかく幸せそうに弾いていました。コンクールでこんな即興的な感じの演奏、ありなのかな、と思いましたが、それで予備選を通ってきたわけで。とにかく、インド部的にはぜひ次に進んでほしいところです。
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お話を聞いてみると、ご家族のルーツはスリランカとのこと(インドではなくて、とすごく強調していたので、そうだよね、そうだよね、と思いました)。現在もヴィルサラーゼに師事しているそうですが、プロフィールを見ると、これまでの師事歴も錚々たる顔ぶれ。どっちかっていうとご両親に話を聞いてみたいところです。

そして、今のところ私的に最も自然に心揺さぶる演奏を聞かせてくれた人、チャールズ・リチャード・アムランさん。ちょっと自分でも理由はよくわかりませんが、柔らかくあたたかい音、自然で包容力のある表現に、ものすごく魅力を感じました。
ちなみにカナダ人でアムランなので、あのアムランと関係あるのかと思いがちですが、親戚関係ではないらしいです。アムランというのはカナダではメジャーな名字らしく、カナダに駐在したことがあるという某メーカーのフランス人さんが「浜松の鈴木さんみたいなもん」と言っていました(以前何かで、浜松のあるエリアではクラスの何割かが鈴木さんだ、みたいな記事を読んだことがあります)。フランス人にも認識される浜松の鈴木率に驚くと同時に、それは言い過ぎだろうと思いましたが、とにかくそれくらいメジャーな名字らしいです。

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ステージにいるときはすごくデカそうと思ったのですが、実際近寄ってみると、そんなにいうほどでもない。小顔で身体が大きいので、遠近感で背も高そうに見えるのかも。
ショパンコンクールは特に出るつもりがなかったのに、これまた、急に出てみようと思って応募したとのことです。あれだけの演奏をしておきながら、終始発言が謙虚でした。浜松コンクールにもエントリーしているらしいので、今度は日本で聴けるかもしれません。もっとも、ショパンで上位入賞したら、どうなるかわかりませんが…。

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そして夜の部で演奏した須藤梨菜さん。5年前にもショパンコンクールのステージに立っていますから、今回が2回目。さすが落ち着いた演奏だなと思いましたが、今までいろいろなコンクールに出てきたけれど、中でも一番緊張した、とのこと。でも、キメどころもバシッときめる、立派な演奏でした。

 

他にもいろいろ紹介したいピアニスト、お話を聞きたいと思うピアニストはいましたが、とりあえず、バックステージなどで会って話をできたコンテスタントを紹介しました。

最終日はどんな演奏が聴けるかなぁ。疲れてきていても、すばらしい演奏に出会えると、一気に疲れが吹き飛ぶんですよね。音楽って本当に不思議です。

ピアノそれぞれの来し方について

第1次予選2日目が終わり、4メーカーのピアノがすべて登場しました。
今回、第1次予選の現在のところのピアノ選択数は、ヤマハが最多の36名、ついでスタインウェイ30名、カワイ11名、ファツィオリ1名です。
ここで、今回の4台のピアノそれぞれの来し方について、簡単にご紹介したいと思います。
いずれも、試作を重ねてできた、各社の持つ今一番いい楽器、なかでもショパンに合う音を持つ楽器を選んできているようです。

それではお話を聞いた順にご紹介。

まずはカワイ。コンサートグランドのシゲルカワイシリーズの最高峰、SK-EXです。
試作の中で生まれたコンディションの良い楽器を、もう1台再現して作成。それらをコンサートで使いながらピアニストの評価が高かった1台を選択し、昨年ヨーロッパに運び込んだものだそう。
この話を聞いて、ずいぶん長い時間をかけて準備したですねと言ったら、お話を聞かせてくださった今回サブチューナーを務める村上さんが一言。
「そう、だからもう今も5年後のためのリサーチは始まっているんです」( ー`дー´)キリッ。
カッコイイ~。
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(弦を小脇に抱えた村上さん)

続いてヤマハは、コンサートグランドのCFX。
2010年、満を持して発表されたこのモデルが、同年のショパンコンクールでユリアンナ・アヴデーエワ優勝のパートナーとなりました。
前回の成功があるからこそ、他のメーカーさんもますますがんばってくるはず…と、今回もかなり気合を入れて準備が行われたようです。
やはりこちらも改良を重ねた試作品からの1台。今年に入ってから、ワルシャワフィルハーモニーホールにCFX4台を入れて選定し、今回の1台を決めたそうです。約1年ほど前に作られたピアノだそう。

そしてFAZIOLIはコンサートグランドのF278
前回のショパンコンクールでは、1次でファツィオリを選んだ4人が全員2次に進み、結果的にトリフォノフが3位に入賞、1~3次で弾いたデュモンが5位に入賞という、信じられない引きの強さを見せました。
今回のピアノは1年半ほど前に完成した楽器で、例によってパオロ・ファツィオリ社長が「すごいのができた!」とウキウキで送り出した1台。昨年のルービンシュタインコンクールのときに、これまでのファツィオリから大きな改善が加えられたという話がありましたが、今回のピアノもその改善以降のタイプだそうです。
その中から、コンサートで弾いたピアニストたちの評価が高かった1台が選ばれています。
6月に行われたチャイコフスキーコンクールで使用したのと同じピアノで、アクションについては、ショパン演奏向きのものを用意して臨んだそうです。
コンクールまでの楽器の準備については、ファツィオリの公式ブログに詳しいので、こちらもどうぞ。
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(真剣すぎる表情の越智さん)

そしてスタインウェイは、コンサートグランドD-274。2013~14年に作られたものだそうです。
1年前にハンブルクで行われた選定では、ポーランド人ピアニストのクシシュトフ・ヤブウォンスキ氏がピアノを弾き、それを調律技術者はじめ関係各位が聴いて選定したそう。
楽器の準備段階には、「あの人は調律師の神様だよ~」という話を時々聞くことがある、ジョルジュ・アマン氏も携わり、コンクール期間中は、ピアニストでもあり調律師でもあるポーランド人の技術者の方が主に調律をしています。選定過程に、ポーランド、ショパンというものへの強い意識が感じられます。
ところでこの調律師さんとはこの前少しお話ししましたが、いろいろ興味深いネタを持っている気配を漂わせていらしたので、今度ちょっと詰め寄っていろいろ聞いてみたいと思います!
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(左が調律のペトナルスキ氏、右はルービンシュタインコンクール記事でお馴染みの、アーティストサービス、グラナー氏)

 

ピアノ選び

「ショパンコンクールのピアノ」では、ピアノの情報にフォーカスした記事をアップしていきます。
今回ピアノを出しているメーカーは、カワイスタインウェイファツィオリヤマハの4社。
2社の日本メーカーに加え、ファツィオリも調律師さんが日本人なので、バックステージにはたくさん日本の技術者さんたちがいて、ここはワルシャワだというのにまったくアウェイ感がありません。一日ホールにいるとあちこちで愉快な知り合いに出会うので、テンション上がりっぱなしで、夜にはぐったりしてしまいます。
(楽器メーカーの関係者の方々は、なぜかたいてい愉快。個人的な感想です。)

さて。
すでに第1次予選が始まっていますが、まずは一昨日まで行われていたピアノ選びの話題を。
コンクール開幕前の9月28日から、コンテスタントはホールで演奏のパートナーとなるピアノを選択しました。
いずれのメーカーさんも、5年に1度のこのときのために入念に調整を加えた楽器を投入しています。以前、ルービンシュタインコンクール中の記事で「コンクールにピアノを出すわけ」というものを書きましたが、数あるコンクールのなかでもショパンコンクールの注目度というのは圧倒的ですから、各メーカーさん、より一層気合いが入っています。

ピアノ選びは、コンクールの会場となるフィルハーモニーホールで行われます。
ピアノが搬入されてから、ステージの上で調律ができる限られた時間をメーカーごとに分けあい、昼夜問わず作業が行われるそうです。大変だ…。

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オープニングコンサートのリハーサルも行われているため、ステージ上には椅子や機材がのこされたまま。狭い場所に4台ぎっちりピアノが並べられています。できれば本番と同じようにもう少し横向きに置けたほうがいいわけですが、スペース上これが限界とのこと。
不公平にならないよう、ピアノを置く位置の順番は、時々(ちゃんと決まっていなくてなんとなくタイミングが来たら)変えられていたそうです。

私がセレクションを見ることができたのは最後の日の5人だけでした。
このセレクション中の会場というのには、独特の空気感がありまして。制限時間内で選ばなければならないというコンテスタントの焦りと、メーカー関係者のみなさんの期待感、緊張感とが、薄暗いホールに渦巻いています。

コンテスタントも、ピアノの選び方は人それぞれ。同じ曲の同じ部分を、複数のピアノを行ったり来たりしながら弾き比べる人とか、制限時間だと呼ばれても立ち上がりながら最後までピアノに触っている人とか。
みなさんけっこうマジ弾きしてくださるので、見学しているこちらにとっても、聴き比べができる興味深い時間となります。なにせ、同じ人が同じ曲で続けざまに違うピアノを弾いてくれるわけですから、違いを比べるにはもってこいの状況です。

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(セレクションが終わって、ワラワラとピアノの片づけに入る、愉快なみなさま)

どのメーカーのピアノもとても良い状態で、個性はそれぞれありながら、ものすごくキャラクターがかけ離れているという感じでもなく、これは選ぶのが大変そうだなと思いました(ただ、鍵盤の重さはけっこう違ったらしいので、その好みで判断した方もいたかもしれません)。

というのも、これは次の記事でもう少し詳しく書きますが、各メーカーさんにここに持ってくるピアノを選んだ基準を聞くと、やはり「ショパンに合う音を持っているピアノ」という言葉が返ってくるわけで。となると当然、キャラクターが大きく違うようになることはないのかもしれません。
普通のコンクールでは(もちろんレパートリーに傾向はあっても)、今のトレンドとか参加者の嗜好とかを各メーカーで判断して、それに合わせて調整してもってくるわけですから、それはそれぞれ違うものになりますよね。
…とはいえ、5年前のショパンコンクールのときは、もうちょっとそれぞれキャラも状態も違ったような気もしますが。

いずれにしても、どのピアノもとてもすばらしい楽器です。ワルシャワフィルハーモニーホールのナチュラルな音響でこれらの音を楽しめるのは、とても贅沢な時間であります。

 

ワルシャワから記事を更新します

第17回ショパン国際ピアノコンクール、今年もオープニングからファイナルまで現地で取材することになりました。
今回は音楽誌ではなく、「家庭画報」2016年1月号(12月1日発売)がショパンコンクールの大きな特集を組むということで、記事を執筆します。
家庭画報の新年号というと、毎年キラッキラというイメージなので少し緊張しますが、ピアノ好きにもそうでない方にも、ショパンコンクールの臨場感やおもしろさを味わっていただけるよう、じっくり考えながら記事をまとめたいと思います。
ショパンゆかりの地を巡るページも入る予定ですが、このあたりは特に、家庭画報のベテランチームならではの美しい記事が期待できると思います。
印刷も写真も綺麗で、いろいろな見せ方ができ、さらにいろいろなタイプの読者が読んでくれる雑誌でショパンコンクールのことを書くことができるというのは、嬉しいです。

…とはいえ。
みなさんうっすらお気づきだとは思いますが、家庭画報では、私が普段、ピアノ好きのみなさんにお届けしているようなちょいマニアックな音楽的話題は、確実に載せきれない。というか載せてもらえない。
たまりにたまったネタをどこにぶつけたらいいの!ということで、そうした情報は、こちらのサイトで解き放ってゆくことにしたいと思います。
みなさんのネット鑑賞(もちろん現地聴きに来ている方も)がより楽しくなり、またお気に入りのピアニストとの出会いにつながるような情報をお届けできたらいいなぁ。

また、2014年のルービンシュタインコンクールのときも好評だった、コンクールで弾かれるピアノに注目した記事も更新していきます。
ガラコンを主催するジャパン・アーツの公式FBとブログにも記事を提供しますので、あわせてご覧ください。

さて、コンテスタントが使用するピアノ選びも行われ、コンクール第1次予選の演奏順も発表されました。
2010年のコンクールでは演奏順はくじ引きでバラバラに決められましたが、今回はスタートとなるアルファベットをショパン・インスティテュートの人が引き、そこから頭文字のアルファベット順で演奏します。今回は、「B」からのスタートとなりました。
前々回と同様のスタイルに戻した形です。
2005年のとき、この演奏順の形だと、イム・ドンミン&ドンヒョク兄弟が必ず連続になるということが少し(本人たちの間で?)問題になっていて、いろいろな対策がおこなわれていたことを思い出します。どちらも自分の今後のキャリアをかけて臨んでいて、お互いうまくいってほしいけれど、当然ライバル同士という複雑な状況だったわけです。
演奏スタイルは違うとはいえ、やはり連続で弾けばより比べられます。見た目もなんとなく似ている二人だから、余計かもしれません(キャラはまったく違うけど)。
演奏順というのは出場者にとっては大事な問題ですからね。何日目の何時に弾くかという問題はもちろん、誰の前または後に弾くかも、どうしても印象に影響を与えます。
まあ、男兄弟そろってピアノがうまくて、同じコンクールに出て、両方ファイナルまで残る(しかも二人そろって3位に入賞)、ということは激レアケースなので、そうそう起きない問題だと思いますが。
今回の演奏順のことで、10年前のそんな出来事を思い出しました。
10月1日、2日と行われるオープニングコンサートに続き、
3日から始まる第1次予選の演奏順と時間は、こちらから確認できます。