ピアノ選び


「ショパンコンクールのピアノ」では、ピアノの情報にフォーカスした記事をアップしていきます。
今回ピアノを出しているメーカーは、カワイスタインウェイファツィオリヤマハの4社。
2社の日本メーカーに加え、ファツィオリも調律師さんが日本人なので、バックステージにはたくさん日本の技術者さんたちがいて、ここはワルシャワだというのにまったくアウェイ感がありません。一日ホールにいるとあちこちで愉快な知り合いに出会うので、テンション上がりっぱなしで、夜にはぐったりしてしまいます。
(楽器メーカーの関係者の方々は、なぜかたいてい愉快。個人的な感想です。)

さて。
すでに第1次予選が始まっていますが、まずは一昨日まで行われていたピアノ選びの話題を。
コンクール開幕前の9月28日から、コンテスタントはホールで演奏のパートナーとなるピアノを選択しました。
いずれのメーカーさんも、5年に1度のこのときのために入念に調整を加えた楽器を投入しています。以前、ルービンシュタインコンクール中の記事で「コンクールにピアノを出すわけ」というものを書きましたが、数あるコンクールのなかでもショパンコンクールの注目度というのは圧倒的ですから、各メーカーさん、より一層気合いが入っています。

ピアノ選びは、コンクールの会場となるフィルハーモニーホールで行われます。
ピアノが搬入されてから、ステージの上で調律ができる限られた時間をメーカーごとに分けあい、昼夜問わず作業が行われるそうです。大変だ…。

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オープニングコンサートのリハーサルも行われているため、ステージ上には椅子や機材がのこされたまま。狭い場所に4台ぎっちりピアノが並べられています。できれば本番と同じようにもう少し横向きに置けたほうがいいわけですが、スペース上これが限界とのこと。
不公平にならないよう、ピアノを置く位置の順番は、時々(ちゃんと決まっていなくてなんとなくタイミングが来たら)変えられていたそうです。

私がセレクションを見ることができたのは最後の日の5人だけでした。
このセレクション中の会場というのには、独特の空気感がありまして。制限時間内で選ばなければならないというコンテスタントの焦りと、メーカー関係者のみなさんの期待感、緊張感とが、薄暗いホールに渦巻いています。

コンテスタントも、ピアノの選び方は人それぞれ。同じ曲の同じ部分を、複数のピアノを行ったり来たりしながら弾き比べる人とか、制限時間だと呼ばれても立ち上がりながら最後までピアノに触っている人とか。
みなさんけっこうマジ弾きしてくださるので、見学しているこちらにとっても、聴き比べができる興味深い時間となります。なにせ、同じ人が同じ曲で続けざまに違うピアノを弾いてくれるわけですから、違いを比べるにはもってこいの状況です。

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(セレクションが終わって、ワラワラとピアノの片づけに入る、愉快なみなさま)

どのメーカーのピアノもとても良い状態で、個性はそれぞれありながら、ものすごくキャラクターがかけ離れているという感じでもなく、これは選ぶのが大変そうだなと思いました(ただ、鍵盤の重さはけっこう違ったらしいので、その好みで判断した方もいたかもしれません)。

というのも、これは次の記事でもう少し詳しく書きますが、各メーカーさんにここに持ってくるピアノを選んだ基準を聞くと、やはり「ショパンに合う音を持っているピアノ」という言葉が返ってくるわけで。となると当然、キャラクターが大きく違うようになることはないのかもしれません。
普通のコンクールでは(もちろんレパートリーに傾向はあっても)、今のトレンドとか参加者の嗜好とかを各メーカーで判断して、それに合わせて調整してもってくるわけですから、それはそれぞれ違うものになりますよね。
…とはいえ、5年前のショパンコンクールのときは、もうちょっとそれぞれキャラも状態も違ったような気もしますが。

いずれにしても、どのピアノもとてもすばらしい楽器です。ワルシャワフィルハーモニーホールのナチュラルな音響でこれらの音を楽しめるのは、とても贅沢な時間であります。