ピアノそれぞれの来し方について


第1次予選2日目が終わり、4メーカーのピアノがすべて登場しました。
今回、第1次予選の現在のところのピアノ選択数は、ヤマハが最多の36名、ついでスタインウェイ30名、カワイ11名、ファツィオリ1名です。
ここで、今回の4台のピアノそれぞれの来し方について、簡単にご紹介したいと思います。
いずれも、試作を重ねてできた、各社の持つ今一番いい楽器、なかでもショパンに合う音を持つ楽器を選んできているようです。

それではお話を聞いた順にご紹介。

まずはカワイ。コンサートグランドのシゲルカワイシリーズの最高峰、SK-EXです。
試作の中で生まれたコンディションの良い楽器を、もう1台再現して作成。それらをコンサートで使いながらピアニストの評価が高かった1台を選択し、昨年ヨーロッパに運び込んだものだそう。
この話を聞いて、ずいぶん長い時間をかけて準備したですねと言ったら、お話を聞かせてくださった今回サブチューナーを務める村上さんが一言。
「そう、だからもう今も5年後のためのリサーチは始まっているんです」( ー`дー´)キリッ。
カッコイイ~。
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(弦を小脇に抱えた村上さん)

続いてヤマハは、コンサートグランドのCFX。
2010年、満を持して発表されたこのモデルが、同年のショパンコンクールでユリアンナ・アヴデーエワ優勝のパートナーとなりました。
前回の成功があるからこそ、他のメーカーさんもますますがんばってくるはず…と、今回もかなり気合を入れて準備が行われたようです。
やはりこちらも改良を重ねた試作品からの1台。今年に入ってから、ワルシャワフィルハーモニーホールにCFX4台を入れて選定し、今回の1台を決めたそうです。約1年ほど前に作られたピアノだそう。

そしてFAZIOLIはコンサートグランドのF278
前回のショパンコンクールでは、1次でファツィオリを選んだ4人が全員2次に進み、結果的にトリフォノフが3位に入賞、1~3次で弾いたデュモンが5位に入賞という、信じられない引きの強さを見せました。
今回のピアノは1年半ほど前に完成した楽器で、例によってパオロ・ファツィオリ社長が「すごいのができた!」とウキウキで送り出した1台。昨年のルービンシュタインコンクールのときに、これまでのファツィオリから大きな改善が加えられたという話がありましたが、今回のピアノもその改善以降のタイプだそうです。
その中から、コンサートで弾いたピアニストたちの評価が高かった1台が選ばれています。
6月に行われたチャイコフスキーコンクールで使用したのと同じピアノで、アクションについては、ショパン演奏向きのものを用意して臨んだそうです。
コンクールまでの楽器の準備については、ファツィオリの公式ブログに詳しいので、こちらもどうぞ。
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(真剣すぎる表情の越智さん)

そしてスタインウェイは、コンサートグランドD-274。2013~14年に作られたものだそうです。
1年前にハンブルクで行われた選定では、ポーランド人ピアニストのクシシュトフ・ヤブウォンスキ氏がピアノを弾き、それを調律技術者はじめ関係各位が聴いて選定したそう。
楽器の準備段階には、「あの人は調律師の神様だよ~」という話を時々聞くことがある、ジョルジュ・アマン氏も携わり、コンクール期間中は、ピアニストでもあり調律師でもあるポーランド人の技術者の方が主に調律をしています。選定過程に、ポーランド、ショパンというものへの強い意識が感じられます。
ところでこの調律師さんとはこの前少しお話ししましたが、いろいろ興味深いネタを持っている気配を漂わせていらしたので、今度ちょっと詰め寄っていろいろ聞いてみたいと思います!
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(左が調律のペトナルスキ氏、右はルービンシュタインコンクール記事でお馴染みの、アーティストサービス、グラナー氏)