いよいよ演奏順も決まり、明日からコンクールの演奏が始まります。
ピアノの選定は11日から行われていました。
各人の持ち時間は15分。
ステージ上に置かれたファツィオリ、スタインウェイの2台から選びます。
自分にとって弾きやすいか、演奏するプログラムに合うかどうか、
本選まで進んだ場合、オーケストラと合わせても負けない力をもっているか、
そしてとにかく自分好みの良い音がするかなど、
コンテスタントはいろいろな観点からピアノを選ぶのだと思います。
そして、選ぶ人が多くないピアノをたまたま選んだりすると、
演奏順のタイミングによっては自分の好みに合わせてじっくり調整してもらえる…
ということも、あったり、なかったり。
ピアノ選び、けっこう奥が深いです。
ピアノメーカーの方と突っ込んだお話をしていると時々出てくる話題に、
コンクールのステージにピアノを乗せるということをメーカーが一体なぜ続けるのか、
というものがあります。
その意義は一見明らかなようで、とても微妙なものだったりするんですよね。
ホール自体が所有していることが多いメーカーはまだ良いかもしれませんが、
そうでない多くのメーカーの場合は、コンクールの度に、
海を越えての運送や、長らく運搬された後の楽器の調整などが必要で、
資金も労力もかかります。
同時に、少しでも優れたピアノをつくりたい、
ピアニストの力になる楽器をつくりたいという熱い想いがいくらあっても、
モノをつくるメーカーである以上、そのモノが売れなければ成り立たないわけで。
優勝者が使ったメーカーだからといって
すぐに世界のホールがそのピアノを買い求めるわけではありません。
ファンの人が、ポンっ!と買うということも、そう多くはないでしょう。
もちろん認知度はあがってその良い音を多くの人が聴くことになるし、
さらに言えば、将来活躍するであろうピアニスト達に
一度でもそのピアノを弾いてみる機会を持ってもらうきっかけにはなると思いますが。
その意味で、コンクールのステージにピアノをのせるというのは、
単にビジネスのことを考えればちょっと遠回りな“プロモーション”と
考えられなくもありませんね。
それでも確かに、根気よくコンクールへの挑戦を続けることで、
少しずつ世界のホールでも導入されることが増えているというのは、実際あると思います。
まあ、そんなピアノメーカーの商売事情はさておき、
私たちピアノ好きにとって大切なのは、
こうしたコンクールの舞台をひとつの目標にメーカーがより優れた楽器を開発し、
調律技術者の方々もその技を磨いていってくれるということ。
こうして世の中に良い音のするピアノが増えていくのですから、すばらしいことですよね。