第1次予選最終日を前に


あっという間に、今日(10月7日)は第1次予選最終日。
全演奏の終了予定時刻は20:00(日本時間8日AM3:00)で、そこから審査に入り、結果発表となります(ライブ配信もあると思います)。
私の知る限りの過去2回では、1次の結果が一番時間がかかっていたような気がするので、日付が変わる前に発表してくれるといいな…というところ。
ちなみに前回は、アルゲリッチが採点のやり方を間違えてやり直しているとかいう理由で、めちゃくちゃ時間がかかったような気がします。
(本当か嘘かはわかりませんが。今回は頼みますよ、ねえさん!)

さて、1次の結果発表を前に、ここまでを振り返ってみようと思います。

まずは改めて、1次の課題曲について。
指定のエチュードから2曲、指定のノクターンまたはエチュードから1曲、バラードまたはスケルツォまたは幻想曲から1曲の、計4曲を弾きます(約25分)。
つまり、技巧的なエチュードと、歌う感じのノクターン的作品と、ちょっと長めの詩的な作品、全部弾いてみせてちょうだいね、という課題です。

なにせ出場者が78人もいますから、1日に何度も同じ作品を聴くことになります。そんなわけで、アパートに帰って食事の支度などをしながらついショパンを鼻歌で歌ってしまうことになるわけですが、3日目あたりからその鼻歌の内容がなんとスケルツォとかにになってくるんですね…。
ノクターンやらバラードならまだしも、スケルツォ1番を鼻歌って…これは3日目にしてすでに末期だ、と愕然とするわけです。
いくらショパンの音楽がすばらしいとはいえ、朝から晩まで12人の演奏を聴くとなると、だんだん辛くなってきます。それでも、ときどきハッとする演奏に出会うことができるので、やっぱり聴き続けてしまうんですね。

さて、演奏順の都合などで話を聞きたいと思いながら叶わなかった方も多いのですが、ここでは、今回バックステージを訪ねることができたコンテスタントの写真などを紹介していきます。

ちなみに今回わたくし、まわりがポーランド評論家勢というエリアに座っております。
お隣はショパコン聴き続けて50年、ベテラン評論家ヤン・ポピス氏。ポーランド語はわかりませんが、(彼ら的に)演奏が微妙なときなど容赦なくザワつくので、ちょっと怖いと同時に、リアクションが興味深いです。

さて。
まずは1日目より、チョ・ソンジン君。
確か去年のルービンシュタインコンクールでも初日に弾いていて、初日づいているんだと残念そうにしていましたが、それでも、スタインウェイのピアノから他の誰より一際ダイナミックレンジの広い音を導き出し、完成度の高い演奏を聴かせてくれました。
でも実際は、ものすごく緊張していたそうです。確かにそんな雰囲気だったなと思い、「ああ、曲と曲の間にずいぶん時間をとっていたもんね」と言うと、「どうせその間に飽きちゃったんでしょ」との返し。いつの間にそんな気の効いたひねくれジョークを言うようになったんだ…!と、15歳の頃、お月様フェイスでまだ無口だった浜松コンクールのチョ君をなつかしく思い出したのでした。もう21歳だもんね、あれから6年か…。
実は来年1月の彩の国さいたま芸術劇場でのリサイタルのために、ほんの短い時間お話を伺いました。そちらの記事も、お楽しみに。

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(練習室で少しお話を聞きました。例によって顔を隠し、シャイボーイっぷりをアピール)

同1日目の最後に弾いた、ジ・チャオ・ジュリアン・ジアさん。5年前にも参加しているジュリアンさんですが、今回からイメージチェンジしていて、つやつやの髪にナチュラルメイク、オレンジのコートが素敵な感じです。カワイのピアノを自在に操り、バシィッと決める音のアタック力がすごくて、インパクトありました。

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(テレビのインタビューを受けています)

2日目の演奏者からは、小林愛実さん。
配信をご覧になった方もいらっしゃると思いますが、小柄な愛実さん、ステージにあがってから椅子がうまく下がらず、悪戦苦闘していました。
なかなかうまくいかない様子に客席にもあたたかい笑いが起こり、やっと下がった…というところで拍手が。ただ、終演後のご本人のお話によれば、「まだちょっと高さが合わなくて直したかったんだけど、拍手されちゃったからもう弾き始めないわけにいかなかった」とのこと。あらら!
何かの古い記事でショパンコンクールを受けるのが夢というコメントを見たので、今回はさぞかし気合いが入った挑戦なのかと思いきや、意外にも「直前まで考えていなくて、締め切りギリギリにやっぱり受けてみるかと思ってあわてて準備した。子供の頃はショパンコンクールって憧れていたからそう言っていたけど、もう最近はそういうわけでもなかった」と言われて、拍子抜けしました。でもそういうノリで受けていると聞いて、逆に安心(?)したような。
喋っているとあっけらかんとした、素直で楽しい女の子なのに、ステージに立つと貫禄があります。別人みたいです!

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(終演後の安心した表情。弾きやすいピアノだったと愛実さん。スタインウェイのグラナーさんが、今度は違う椅子を持ってくるねと言っていました)

そして、二日目最後に演奏したティアン・ルさん。

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今回、1次予選で唯一ファツィオリを選んだコンテスタントです。そして、5年前のコンクールをウォッチしていた方は覚えているでしょう、セミファイナルに進みながら腱鞘炎で途中棄権したユーリ・シャドリン。彼は彼女の夫です!
実はオープニングコンサートの日、シャドリンっぽい人を客席に見かけ「え…?もしかして?でもいるわけないよなぁ。ルビャンツェフみたいに未練があって来ちゃったとか…?それはないよね」(注:おなじみ、ちょっと変わったロシアのピアニスト、ルビャンツェフは、5年前、4月の予備選で落とされてしまったものの諦めきれず、10月のコンクールを見に来て、ずっとそこら辺をフラフラしていたのでした)と思い、人違いだろうと声をかけませんでした。
実は向こうも私を見かけていたそうでしたが、「あいつ月刊ショパン辞めたっていってたし、いるわけないよな」と思って、声をかけなかったとか。
そんな中、妻のティアンさんのサポートのためにシャドリン君が来ていると聞き、ようやく納得がいったのでした。(未練じゃなかったか!)
二人はともにレオン・フライシャー門下。5歳違いですが、シャドリンは奥さまの先生でもあるそうです。
この夫婦には翌日にたっぷりお話を聞きましたので、記事をお楽しみに。

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(なぜかインタビューを受けている夫)

そして、3日目のコンテスタントからは、ゲオルギヒ・オソキンス。
このサイトでも紹介した昨年のルービンシュタインコンクールで入賞した、アンドレイ・オソキンスの弟さんです。お兄さんとはまったくタイプの違う、慎重かつ超スーパー個性的、客席を全部自分のペースに巻き込む、それでいて音にものすごくこだわっている演奏を聞かせてくれました。
しかも、どこかで見たことのある、低めのマイ椅子(ファツィオリ製)。5年前、衝撃の濃厚ショパンで人々を魅了したボジャノフを思い出さずにいられません。

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演奏終了後は風のようにホールを去って行きましたが、実はこの数日前、某所で彼と話をするチャンスがありました。ステージ衣装もなかなかオシャレでしたが、私服も個性的で、「インドに長期滞在しているシャレオツな若い男子でこういう人いるな」という感じの素敵な服装。腕に巻いている赤い紐が気になりますが、「これで手元がアップになったときの映像でも僕だとわかるでしょ」と言っていました(それが目的でつけているのかは知りませんが)。
ちなみに、周囲のポーランド評論家勢は、彼が出てきた瞬間にザワザワしていました。予備選からの評判で、要注意人物となっていたのかも。

4日目のコンテスタントからは、インド部的に勝手に注目していた、カウシカン・ラジュシュクマールさん。ロンドン生まれとはいえ、明らかに南アジア系のお顔立ち&お名前だったので、ぜひお話ししたいと思っていたのでした。
自分なりのショパンを、とにかく幸せそうに弾いていました。コンクールでこんな即興的な感じの演奏、ありなのかな、と思いましたが、それで予備選を通ってきたわけで。とにかく、インド部的にはぜひ次に進んでほしいところです。
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お話を聞いてみると、ご家族のルーツはスリランカとのこと(インドではなくて、とすごく強調していたので、そうだよね、そうだよね、と思いました)。現在もヴィルサラーゼに師事しているそうですが、プロフィールを見ると、これまでの師事歴も錚々たる顔ぶれ。どっちかっていうとご両親に話を聞いてみたいところです。

そして、今のところ私的に最も自然に心揺さぶる演奏を聞かせてくれた人、チャールズ・リチャード・アムランさん。ちょっと自分でも理由はよくわかりませんが、柔らかくあたたかい音、自然で包容力のある表現に、ものすごく魅力を感じました。
ちなみにカナダ人でアムランなので、あのアムランと関係あるのかと思いがちですが、親戚関係ではないらしいです。アムランというのはカナダではメジャーな名字らしく、カナダに駐在したことがあるという某メーカーのフランス人さんが「浜松の鈴木さんみたいなもん」と言っていました(以前何かで、浜松のあるエリアではクラスの何割かが鈴木さんだ、みたいな記事を読んだことがあります)。フランス人にも認識される浜松の鈴木率に驚くと同時に、それは言い過ぎだろうと思いましたが、とにかくそれくらいメジャーな名字らしいです。

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ステージにいるときはすごくデカそうと思ったのですが、実際近寄ってみると、そんなにいうほどでもない。小顔で身体が大きいので、遠近感で背も高そうに見えるのかも。
ショパンコンクールは特に出るつもりがなかったのに、これまた、急に出てみようと思って応募したとのことです。あれだけの演奏をしておきながら、終始発言が謙虚でした。浜松コンクールにもエントリーしているらしいので、今度は日本で聴けるかもしれません。もっとも、ショパンで上位入賞したら、どうなるかわかりませんが…。

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そして夜の部で演奏した須藤梨菜さん。5年前にもショパンコンクールのステージに立っていますから、今回が2回目。さすが落ち着いた演奏だなと思いましたが、今までいろいろなコンクールに出てきたけれど、中でも一番緊張した、とのこと。でも、キメどころもバシッときめる、立派な演奏でした。

 

他にもいろいろ紹介したいピアニスト、お話を聞きたいと思うピアニストはいましたが、とりあえず、バックステージなどで会って話をできたコンテスタントを紹介しました。

最終日はどんな演奏が聴けるかなぁ。疲れてきていても、すばらしい演奏に出会えると、一気に疲れが吹き飛ぶんですよね。音楽って本当に不思議です。