続いて今回のファツィオリのお話


さて、続いて今日はファツィオリのピアノの出所のお話。

ファツィオリは、ルービンシュタインコンクールには初めての参加です。
今回ステージに乗っているピアノは、ファツィオリのF278。
ファツィオリには、普通のフルコンサートグランドよりも少し大きい
F308(つまり全長が3m8cm)という型があることが知られていますが、
今回使用されているのは通常サイズのフルコンです。
製造年は2013年。
ピアノフォルティの公式ブログでも紹介されている通り、
昨年12月にトリフォノフが、イタリア、サチーレの工房で選定した楽器です。
前回のコンクールで演奏したときの経験をもとに慎重に選ばれ、
その後改良を重ねられたとのこと。

ファツィオリといえば、前述の特大サイズをはじめ、4本目のペダルなど、
革新的な技術をどんどん開発し取り入れてゆくメーカーというイメージがありますが、
実際、「ピアノが完成することはない」というのがパオロ・ファツィオリ社長の信念だとか。

パオロさんに前にお話をうかがったとき、
「ピアニストがピアノと格闘しているのを見るのが耐えられなかった。
もっと楽に豊かな音が出るピアノが創りたかった」
とおっしゃっていたのが印象に残っています。
この方、普段からなかなか自由というか、70歳近いのに“少年”みたいな人で、
確かにこの人なら普通の人間が想像もしないような思い切ったことをしそう、
という独特の気配をお持ちです…。

実際にはもちろんパオロさんの思いつきだけで事が進んでいるわけではなく、
科学的な研究チームとともにさまざまな開発がなされているそうですが。

そんなわけで今回ステージに乗っているファツィオリも、
「今までとはかなり違う」のだそうです。

2010年のショパンコンクール、2011年のチャイコフスキーコンクールでの経験をもとに、
大きな改良が加えられ、あの時のピアノとはフレームの形をはじめ
いろいろなことが変わっているとのこと。

ほとんどのコンクールの調律、アーティストケアは日本のチームが担当していますが、
そんな日本側からの意見が大いに取り入れられ、大胆な改良が施されたらしいです。
結果、ファツィオリ特有の良さは残しつつ、
オーケストラとの共演などでも負けない底力が充分についた、とは、
ショパンコンクール、チャイコフスキーコンクール、
そして今回も調律を担当している越智晃さんのお話。

いよいよステージ1の5日目、6日目にはファツィオリのピアノが登場する予定です。
ピアニストたちがどう弾きこなすのか、楽しみであります!