クライバーン、セミファイナルもあと1日

セミファイナルも残すところあと1日。
6月5日最終日に、2人のリサイタルと4人のモーツァルトの協奏曲の演奏が終わると、その日の夜遅くに6人のファイナリストが発表されます。

ファイナル進出者を決める審査の方法は、9名の各審査員がここまで全てのステージの印象を考慮したうえで、次に進むべき6人を選んでマークをつけ、タイが出たときのためにMaybeを1人選んでおき、それを集計するというもの。
ちなみに、ここまでのステージの審査はすべてこのタイプの方式でした。
6人、どんな顔ぶれとなるのでしょうか……。

さて、セミファイナルでは、コンテスタントは、60分のリサイタルに加え、ニコラス・マギーガン指揮、フォートワース交響楽団とモーツァルトのピアノ協奏曲(9番、20〜25番、27番より選択)を演奏しています。

ここで、これまでにとらえた一部のコンテスタントの様子などをゆるやかにご紹介しておこうと思います。

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ダニエル・シューさん。ステージに出てきたときの声援も大きく、人気高い感じ。
モーツァルトの協奏曲では、ダニエル君によく合った21番という選曲で、明るく力のある音を響かせていました。
カデンツァおもしろいなぁと思って聴いていたら、これは同じくピアニストのお兄さんによる作だったそうです。この一家、3人きょうだいが3人ともピアニストらしい。ちなみにダニエル君は末っ子です。

ゲオルギ・チャイゼさん。そういえば昨秋横浜招待で聴いたシューベルトで、ものすごく独特のもんやり音(いい意味で)に驚き、一体どんな指の形状をしているのかちょいと見せてもらいたいと思っていたのでした。その希望をまさかテキサスでかなえることになるとは。
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うっすら笑みを浮かべつつ、けっこうノリノリで見せてくれました。想像していたとおりのまぁるい指先。チャイゼさん、ステージ上の印象と違ってけっこう小柄。しかもメガネかけているとショスタコーヴィチに似てる。
そして、横浜みなとみらいホールのすばらしさ、歌舞伎シアターに行って超楽しかったということなど(とはいえ、歌舞伎は上演中でなく、バックステージを見に行ったといっていました)、静かにわりとすごい勢いで語っていました。

イーケ・トニー・ヤン君は、スカルラッティに、ショパンの葬送ソナタ、展覧会の絵というボリュームたっぷり、濃いプログラムを弾いていました。大変そうだな…と思いましたが、当の本人は「どっちも弾きたいなと思って一緒に入れただけだよ~」みたいな口ぶりでした。
ちなみにトニー君、1次のときはもう1台のほうのハンブルク・スタインウェイ(財団の楽器)を使っていましたが、2次以降で、他の皆さんと同じほうのハンブルク・スタインウェイ(NYスタインウェイホールの楽器)にチェンジ。変えて、断然ひき心地がいいといってました。

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テキサスでも、ショパンコンクールの時と似たような赤いジャンパー着用。赤い上着が好きなのかな。
ステージでは、やはりワルシャワでも着ていた異素材シャツを愛用していますね。(通気性が良くて伸縮性もあり、着心地がいいのだと本人は言うけど、傍からは全然そう見えない、あのシャツ)

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レイチェル・チャンさん。1次から安定した演奏を聴かせていますが、セミファイナルでもプロコフィエフで美点炸裂。彼女の音は、決して音量は大きくないんだけど、独特のタッチですごいインパクトがあります。プロコフィエフのソナタ6番がすごくハマっていました。
セミファイナルから聴きに来ている音楽雑誌のおじさんが彼女のプロコフィエフをえらく気に入ったようで、過去も含めてクライバーンで聴いた演奏の中で最高だったといって興奮していました。以来会うたびに、レイチェル・チャンよかったねー、と言ってきます。会う人会う人に言っているのか、それとも彼女の終演後のバックステージで会ったから、同志だと思っているのか。

ソヌ・イェゴンさんは、仙台コンクール優勝者披露演奏会を日本で聴いて、堅実で、でもさりげなく華やかで、とてもいい演奏をする方だと思っていましたが、その安定感健在。R.シュトラウス=グレインジャーの「薔薇の騎士の愛の二重唱によるランブル」で、しみじみいい曲だなぁと思わせ、プロコフィエフのソナタ6番ではキレのよい表現を聴かせてくれました(とはいえ、急に降った大雨の湿気のせいで、プロコフィエフの連打や速いパッセージは、いつもより弾きにくかったとのこと)。自分のいろいろな面を見せるうまい選曲。

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1次からずっと気になっていたソヌさんのイメチェン問題について尋ねると、「痩せたのと、メガネをやめたのと、髪を伸ばしたからかな。前はすごく短かったから」とのこと。なんだか垢ぬけた感じがあって、人の印象ってちょっとしたことで本当に変わるんだなと思いました。でもよく見ると、確かにお顔は昔のまんま。
そして撮った写真を後から見て、なんたるつやつやフェイス!と驚きました。