クライバーンコンクール、セミファイナル3日目に思う


セミファイナルが始まって3日目。折り返しです。

今日はあまり演奏と関係ない現地の様子を少しご紹介しようかなと思います。

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セミファイナルからは会場がバス・パフォーマンスホールに移り、コンクールが行われています。

こちらのセキュリティチェックが結構厳しい。大きくてかわいい警察犬も常駐しています。

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ノートパソコンの入ったバックパックを持って入ろうとしたら、入口のセキュリティの人に、大きいバックパックは持ち込めない、どこかに置いてこいと言われてしまいます。鞄のサイズに制限があるのかなと思って、どの大きさまでなら持ち込めるの?と聴くと、大きさはなんでもいい、バックパックがだめなんだ、と。
え、形の問題?と聞くと、わかりませーん、のポーズで、そこにいたセキュリティの人たち全員黙るという…。
そんなわけで、翌日からは普通のショルダーバッグに荷物を入れて無事に入っていますが、これって、どういうルールなんでしょうね?爆弾はだいたいリュックで背負ってくるものっていうセキュリティ界の常識でもあるんでしょうか。

以前インドのタージマハルで、ワイヤーっぽいものは持ち込みNGといわれ、イヤホンとか充電器とか全部預けさせられたことを思い出します。ワイヤーの先に爆弾ついてなきゃ大丈夫だろと思うんだけど、そういう問題でもないんでしょうか。

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そのわりに、街中にもホールの入口付近にも、至るところに大きなゴミ箱があります。テロ対策の名目で、駅にすら一つもゴミ箱がない日本とは大違い。日本人は黙って持って帰るけど、アメリカの場合、そんなふうにゴミ箱を撤去したらそこらじゅうにみんなが捨ててしまうからなのかもね。

そしてこちらがロビー。
バルコニーには歴代の優勝者の懸垂幕が。格闘技の会場みたい。
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コンテスタントの各ラウンドの演奏が、デジタルアルバムとして$5で販売されています(この写真はTCUの会場のロビーです)。
どういうシステムで販売されているのかわかりませんが、休憩中、買っていく人を割と見かけますよ。

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ところで、やっぱり少しはコンクールの話を。
セミファイナルでは、モーツァルトのピアノ協奏曲が演奏されています。

モーツァルトは、シンプルだからこそめちゃくちゃむずかしいし、こわい、とはよく言われること。奏者の技術も音楽性も丸裸になる。それはピアニストだけでなくどの楽器奏者にとってもおなじことです。

その意味で、例えばコンチェルトで管楽器のメロディとピアノが掛け合いをするなんていう場面は、普通のコンチェルト以上に、うまくいったりいかなかったり、それがはっきり聴き手の耳に届いてしまいます。

今回は、全体的にみて、このモーツァルトでオーケストラとの合わせに苦戦している人が多い印象…。全体にどの曲でも、オーケストラがゆったり動きがちだからかもしれません。オーケストラとうまくアンサンブルをしていたマルセル田所さんは、自分のペースよりだいぶテンポを落としたといっていました。逆に、オーケストラを置いて先に走ってしまったかも…と思い返している方もいました。

今セミファイナル3日目まで終わったところでは、なんとなくマルセルさんやアナ・ゲニューシェネさんなど、アラサー組がうまくオーケストラとの掛け合いをこなしている印象です。きっといろいろな成功と失敗を繰り返して、アンサンブルの能力というのは磨かれていくのでしょう。モーツァルトには遊び心や無邪気さが求められ、一方でそういう経験値も求められるのですから、やっぱり難しい課題なのですね。
その意味では、これから演奏する18歳のユンチャンさんあたりがどんなふうにモーツァルトを弾くのか、結構楽しみです。

指揮者、オーケストラの皆さんもハードなスケジュールのなかで大変ですが、ここはひとつ、若いピアニストたちをうまくサポートする方向でがんばってほしいところであります。