テルアビブの人々、そして選曲について考えたこと



ここテル・アビブの街にはとにかくネコが多いです。
人間より多いんじゃないか?というくらい、頻繁に猫が出没します。
ネコ好きの人なら、いちいちつっかかって前に進めないだろうというくらい、味のあるネコさんがあちこちに。ホールのエントランスはネコさんのたまり場のようで、夕刻になるとだいたい集合しています。

ところでここでテル・アビブについて改めてご紹介。
イスラエルという国は、東側に、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地エルサレムがあることでも知られていますね。
一方のテル・アビブは地中海に面した西側に位置する、イスラエル最大の都市です。
国連ではイスラエルの首都はテル・アビブとしていますが、イスラエル側は、首都はエルサレムだと主張しているとのこと。
ご存知の通り、地域によっては宗教的、政治的問題を抱えていて、治安も悪いです。
今回イスラエルを訪れるにあたってどんな街だろうかとうっかり“イスラエル”のワードでGoogle画像検索をしてしまったところ、ものすごく陰惨な画像がたくさんヒットしてしまいましたので、みなさんくれぐれも試さないように。
テル・アビブは治安も良く安全です。なので、テル・アビブで検索すれば問題なかったんですが…。

テル・アビブにはどこまでも続く美しいビーチがあり、この季節には特に、休暇を過ごす長期滞在の観光客も多く見られます。緑も多く、人は親切で、それぞれが良い感じに自由に(自己中に?)生きているという印象。
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外国人にとって少し驚きなのは、ユダヤ教の「安息日」(シャバト)の習慣。金曜日の日没から土曜日がそれにあたります。
そのため、ホールもお客さんが増えるのは金曜と土曜。日曜日の日中は、平日以上に人が少なかったです。

安息日には機械を操作したり、火を扱ったりしてはいけないそうです。そのためたくさんのレストランなどが閉まっているのはもちろん、例えばエレベーターが各階停止の自動運転になっていたり(ボタンを押すことによる電気の反応で火花が発生することがダメらしい)、はたまた聞くところによると、ホテルのロビーにあるエスプレッソマシンのスイッチも入れられないようになっていたりするとかで、初めての滞在だと驚くような習慣に遭遇します。
そういえば、金曜、土曜とアパートの階段の電気が消えて真っ暗でかなり怖かったのですが、これもシャバトゆえか…。それともたまたま消えていただけなのか。

一方、安息日はどうした?というくらい、年中無休24時間営業のスーパーも多いので便利なところもあります。しかもそれを教えてくれる店員さんが大体ものすごく得意気です。こういうときには、イスラエルの人かわいいなと思います。

ただ、イスラエルの人の自由さ、無邪気さをかわいいと思えないのが、ホールでのマナーです。配信をご覧の方はお気づきかもしれませんが、携帯が鳴ることはしょっちゅう。
ある日など、となりのおじさんはワルトシュタインに合わせて貧乏ゆすりをしているし、前に座っているおばさんは膝の上に置いたビニール袋を意味もなく手でモミモミして音を立てつづけているし、その横には演奏中に何度もひそひそ話を続ける人がいて、それをなんと前述のモミモミおばさんが注意するなど、無法地帯状態でした。
いつもそうだというわけではないのですが、おかげでこの滞在中で、雑音を排除して演奏だけに集中する能力が鍛えられそうです。

さて、そんなルービンシュタインコンクールも、ステージ1の5日目が終了。
明日19日が最終日となり、直後に結果発表が予定されています。

ここまで聴いてきて感じていることは、つくづく、プログラムの選び方って重要だなということ。派手で聴衆の反応を得やすいとか、技巧や音楽性で審査員にアピールできるとか、そういう意味でももちろん重要だとは思いますが、やっぱりピアニストの個性に合ったプログラムであることが大切だなぁとつくづく。
以前ご紹介したとおり、このコンクールのリサイタル課題曲はかなり自由で、「ステージ1、ステージ2のいずれかで、古典派、ロマン派、既定の現代作品が入っていればあとはなんでもいい」というものです。
つまり、苦手な分野があれば、ある程度“ごまかせる”わけで。
それなのに、例えば(あくまで私の視点から見てですが)あまり色気のあるタイプと思えないのにやたらロマン派や近代作品から妖艶系のプログラムを選んでいたり、あまり音の粒を揃えて弾くのが得意そうに見えないのに、バッハやモーツァルトばかりのプログラムを組んでいたり。いや、もちろんこれはあくまで私がそう感じるというだけで、実際には見事にその作品向きの技術をお持ちなのかもしれませんけど、やっぱり、もったいないなと思ってしまいます。
だからといっていかにも“課題曲に古典派が入っていたからできるだけ短くて華やかなものを弾いてごまかします”みたいなのがミエミエでも、微妙ですけどね。
プログラムの組み立てって難しいですね。

まあ、これはコンクールに限った話ではないのかもしれません。普段の演奏会でも、ご本人が得意と思っている作品と、聴く側がこの人にはこれが合うと思うものが違うというのは、時々あること。
ポートレイトなどで、他人が選ぶ写真と本人が気に入っている写真が違うというのと似たようなものかもしれません。というより、何のジャンルにおいてもあることですよね。
前に誰かが言っていました。人は自分のことには絶対に客観的になれないと。
その事実を心の片隅で覚えておくか否かの違いは大きいと思いますが。

というわけで、最後はだいぶ話がそれましたが、明日はいよいよステージ1最終日&結果発表です。みなさんが次のステージも聴きたいと思ったピアニストは残ってくれるでしょうか…。