みなさまお気づきの通り、ヴァン・クライバーンコンクールでは、スタインウェイのピアノのみが使われています。
かつて他メーカーのピアノも使われていたことがあったようですが、ここしばらくはスタインウェイとの協力関係のもと、1メーカーのみということにしているようです。いろいろ理由はあると思いますが、前事務局長だったリチャード・ロジンスキーさんは以前、メーカー間のコンテスタント獲得合戦の激化を避けることも一つの理由だと話していました。
というわけで、コンクール本番で使う3台のピアノ、30名のコンテスタントが滞在しているホームステイ先のピアノ、そして楽屋の練習用のピアノ、すべて良い状態のスタインウェイ。つまり、ざっと40台近くのグランドピアノが用意されているということ。すごいですね。
クライバーン氏ありし日には、コンクール後、ホストファミリーがピアノをそのまま買い取る場合は、クライバーンがピアノにサインをしてくれるという制度(?)があったそうです。なんとよくできたセールスの流れ。
さて、セレクションには3台のピアノが用意されていました。
ハンブルク・スタインウェイが2台(クライバーン財団所有の楽器と、NYスタインウェイホールの楽器)と、ニューヨーク・スタインウェイが1台。各人15分間が与えられてピアノを選択します。
結果、30人中23人がハンブルク・スタインウェイ(NYスタインウェイホールの楽器)を選択。3人がハンブルク・スタインウェイ(財団所有の楽器)、4人がニューヨーク・スタインウェイ(財団所有の楽器)を選ぶという、たいへん偏った結果となりました。
ちなみにこの大人気のハンブルク・スタインウェイ(NYスタインウェイホールの楽器)は、スタインウェイ社が選んで送ってきた2台(ニューヨーク・スタインウェイとハンブルク・スタインウェイ)から、ホロデンコが選んだ楽器だそう。
ホロデンコさん、さすがコンテスタントのニーズをわかってらっしゃる。
結果、この一番人気のピアノばかりがただひたすら弾かれ続ける日がほとんどとなりました。
ときおりのピアノチェンジ、カーテンコールの最中なのに大きなおじさんたちがワラワラとやってきて、ワイルドに音を鳴らしながら鍵盤をフキフキし、コンテスタントすれすれにゴゴゴーっとピアノを押してはけさせてゆく様子を何度か目にしましたね。
慣れていないせいなのか、それともそれでいいと思っているのか。
先日、スタインウェイの担当調律師さんに、この3台のピアノの特徴などお話を聞くことができましたので、近日ご紹介したいと思います。