チョ・ソンジンおまけインタビュー


【家庭画報の特集、ジャパン・アーツのガラコン冊子、ジャパン・アーツHPなどで書いても、
さらに書ききれなかったコメント(ユル会話中心)を紹介していきます】

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チョ・ソンジンさん(第1位、ポロネーズ賞)

─コンクール中の3週間で、印象に残っている出来事は?

そうですね、まずそんなに長い時間練習していませんでした。スタジオと大学の練習室で、だいたい1日4時間くらい。それで他の時間は、ほとんど毎日、部屋でゆっくりお風呂に入っていました。リラックスしながら、音楽を聴いていました。

─お風呂で音楽とはまた意外な。何を聴いていたんですか?

ラヴェルのコンチェルトです。

─ショパンじゃないんですね。

コンクールのあと演奏会で弾く予定があったので、耳で練習していたんです。でも、ショパンも聴きましたよ。アルゲリッチやコルトーの演奏を聴いていました。のんびり楽しみながら。

─ところで、ファイナルのピアノ協奏曲第1番の演奏はとても楽しかったとおしゃっていましたね。

はい、4ステージで初めて満足のいく演奏ができました。この作品はショパンが19歳のときに書いたもので、ピュアで若さに溢れ、繊細で、楽観的です。ショパンには当時、好きな人がいたこともよく知られていますね。だから、あまりにセンチメンタルに演奏されることなく、若く輝かしい、純粋な感情とともに演奏されるべきだと思っています。ブラームスのような演奏になるべきではありません。今回、ファイナルのオーケストラの演奏は、冒頭がちょっとマーラーのようなスタイルでしたけど。

─オーケストラとコミュニケーションをとるのに充分な時間はありましたか?

いいえ。リハーサルがあって、別れて、そのまま本番でしたから。でも、指揮のカスプシックさんは僕のアイデアやルバート、タイミングを理解して全部合わせてくれたので、よかったです。

─冒頭のオーケストラパートが長いですが、何を考えていましたか?

自分のテンポについてです。かなりゆっくりめの演奏だったので……。
僕の理解では、ショパンの初期のロマンティックな作品は、重すぎずフレッシュなテンポが良いと思っていたので。

─ショパンが今のソンジンさんくらいの年の頃に書いた作品ですよね。

僕はもう21歳ですから、彼のほうが若かったですよ。

─そうですね……ご自分の経験を重ねて演奏したりとか?

それはないですね、残念ながら。ふふふ……。

─ショパンコンクールにむけての準備で気を付けたことは?

そんなに準備したという感覚はないんです。「24のプレリュード」以外は、もともと子供のころから弾いてきた作品ですから。
例えば、ポロネーズやスケルツォは浜松コンクールでも弾いていますし、ピアノ協奏曲第1番はモスクワのショパンコンクールで2008年に弾いています。幻想曲は14歳で弾いていますし、マズルカやノクターンも演奏したことのある作品でした。だから、僕の人生のショパンレパートリーの集約みたいな感じでしたね。

─21歳、人生のレパートリーということですね。

……この歳で、ちょっと変かな(笑)。
僕はもともと6歳で趣味としてピアノを習いました。とてもシャイな子供で一人っ子だったから、一人ぼっちにならないように何か楽器をということで、ピアノを始めたんです。ヴァイオリンも習いましたが上達しませんでした。
ずっと1本ずつの指で弾いているようなレベルだったんですが、10歳のときに10本の指で弾き始めました。そこから本当に急速に勉強したんです。練習は好きではありませんでしたが。

─それで、5年半後には浜松コンクールに優勝したんですね。あれだけの技術をそんな短期間で……。

僕の技術は、伝えたい音楽を表現するには充分かもしれませんが、特にずばぬけているわけではないと思います。15歳のときからほとんど手の大きさも変わりません。

─手といえば、コンクールの動画配信を見ていたら、ステージに出る前に手のストレッチをしつつ指をポキポキ鳴らす様子が映っていましたね。けっこう大きな音がしていて、若干心配になるレベルでしたよ。大丈夫なんですか?

癖なんです。8歳くらいからやっていますが、今のところ大丈夫です。20年後には手がおかしくなっているかもしれないけど(笑)。まあマッサージみたいな感じで気持ちがいいんですね。多分指の動きのためにも良いんだと思います。

[ここからは、チョ君の“ひねくれジョーク劇場”です]

─ところで、ピアノとはあなたにとってなんですか?

楽器です。あとはダイナミクスの表記です。小さく弾きなさいという。

─……おっしゃる通りです。それでは、ピアノから美しい音を出すための秘訣は?

いい調律師さん、ですかねぇ。

─なるほど。それでは、ショパンはあなたにとってどんな存在ですか?

偉大な作曲家です。あとは、僕たちに仕事をくれる雇用者。

─なかなか現実的なご回答で。

ショパンのことが嫌いになれるはずないですよ。彼はあんなにたくさんピアノの作品を書いて、僕たちに仕事をくれるのですから、彼のことは尊敬しなくては!

─……浜松コンクールで会った15歳の頃は、そんなジョークは言わなかったのにね。どうしたんですか。

あのころは英語がうまく話せなかったから、言えなかっただけです。

─確かに、こちらも韓国語はできないから、困ってステージの前に何を食べたかばかり聞いていた記憶が。

覚えてますよ……。

◇◇◇

……というわけで、気になって昔の浜松コンクールのレポートを見返したところ、会話のトピックスは「スパゲティ」「うなぎ」「ハウル」でした…。それにしても発言が初々しいチョ君15歳!

http://www.hipic.jp/hipic/history/7th/topics/7th/13.php

http://www.hipic.jp/hipic/history/7th/topics/7th/22.php

http://www.hipic.jp/hipic/history/7th/topics/7th/3-2.php

(まともなインタビューは下記をご覧ください)

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ジャパン・アーツHP チョ・ソンジンインタビュー

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