ケイト・リウ おまけインタビュー


【家庭画報の特集、ジャパン・アーツのガラコン冊子、ジャパン・アーツHPなどで書いても、
さらに書ききれなかったコメント(ユル会話中心)を紹介していきます】

kate
ケイト・リウさん(第3位、マズルカ賞)

─コンクールの準備を始めたのはいつごろでしたか?

ショパンの作品には、ずいぶん昔から取り組んでいました。そうしたレパートリーを改めてちゃんと勉強し始めたのは、書類選考を通ったことがわかった頃です。その後予備予選を通ってから、これまで勉強したことのない作品にとりかかりました。ショパンのピアノ協奏曲も演奏したことがなかったので、新たに勉強しなくてはいけませんでした。
ただ、新しい試みに次々挑戦しているという感覚だったので、コンクールのためだけに半年で勉強したという感じでもないんです。

─どのようにしてご自分のショパンの音楽を見つけていったのでしょうか。

何かをコピーするのではなく、インスピレーションを大切にしました。
今回、コンクールにむけて勉強している中で、自分にとってお気に入りのピアニストをようやく見つけたんです。その演奏を聴いていると、どんどんモチベーションも上がるし、とにかく楽しかった。ピアノや音楽を通じて、いろいろなことができるような気がしてくるんです。
これが、私がコンクールの準備をする中、インスピレーション得ながらモチベーションを保つことができた秘訣だったのかもしれません。

─……それで、そのピアニストとは、どなたなのでしょう?

エミール・ギレリスとグリゴリー・ソコロフです。ようやく、彼らが私の好きなピアニストだって確信したんです。ショパンの演奏に限って言えば、クリスチャン・ツィメルマンも加えます。
ギレリスを聴くときには、ショパンコンクールの前だからといって作品を限定することなく、プロコフィエフやバッハなどいろいろな作品を聴きました。

─そういえば、ケイトさんはプロコフィエフあたりを弾いたらすごくよさそうですよね。

えっ、本当に~!?(なぜか大爆笑)
昔の私はクールで派手な作品が大好きで、みんなをワオ!と言わせたいという気持ちから、プロコフィエフが大好きだったんですよ。今よりもっとエモーショナルにピアノに入り込んでいたと思います。今もプロコフィエフの作品は弾いて楽しんでいますが、どちらかというとリリカルな作品を好むようになりました。

─そうだったんですかー。いつか聴いてみたいです。ところで、ソロのステージではヤマハを弾いていて、コンチェルトでスタインウェイに変えましたが、その理由は?

ヤマハのピアノの音は厚みがあって、レンジが幅広く、音を楽しめそうだったのでソロのステージで演奏しようと思いました。ウナコルダのペダルもとてもうまく働いていました。
うまくコントロールしないとメタリックな音になりそうだったので、そこは注意が必要でした。
スタインウェイの音は輝いていてブライトな印象があり、遠くの聴衆まで届くと思ったので、コンチェルトで演奏しようと思いました。オーケストラと演奏するときは、自分の音がオーケストラの音の間をぬけてホールの後ろまで届かないといけません。ただ大きく弾くだけでは音が割れてしまいますから、よく考えてコントロールする必要がありました。
実はファイナルのリハーサル中、2階席で聴いてくれていた人から、音が割れているし、ピアノを壊しそうな勢いだと言われちゃって! スタインウェイは音が遠くに飛んでいく楽器だから、そんなに強く鍵盤をたたかなくて大丈夫だといわれました。だから、本番ではすごく注意して演奏しました。

─あのホールは、ステージで自分の音がよく聴こえますか?

はい、いつもだいたい良く聴こえていたのですが、オーケストラリハーサルのときは良く聴こえなくて、ずいぶん鍵盤をたたいてしまったんです。でもそんなことをしなくても大丈夫だとわかったから、本番は心配せずに演奏しました。

─ファイナルでは、ドレスもそれまでの黒から白に変えましたね。

赤いドレスも持っていたのですが、ショパンには合わないかなと思って(笑)。白のほうが上品でショパンの音楽に良いかなと思いました。

─あとは、マズルカ賞も受賞されましたね。

そうなんです、驚いています(笑)。最初、マズルカの感覚をつかむことは難しかったのですが、自分の中で一度理解したあとは、ダンスの感覚を自然に再現していきました。

─マズルカといえば、ケイトさんの先生のダン・タイ・ソンさんが全曲録音をしていますよね。彼から学んだこともありましたか?

もちろんダン・タイ・ソン先生のレッスンは受けましたが、マズルカについて集中的に何かを習うことはありませんでした。彼の演奏するショパンの録音は、今回ショパンの作品を準備するうえで大きな助けになりました。
彼は、出場していた4人の生徒のうち3人が入賞して本当に喜んでいました。私たちがステージに出る時、いつもすごく緊張したとおっしゃっていました(笑)。これまで師事した先生の中でも、最高のすばらしい人物です。

◇◇◇
以上、ケイトさんのおまけインタビューでした。
ショパンについての想いを語り出したときの夢見るような表情が忘れられません。
(そのコメントは、別のところで紹介していますが…)
彼女の演奏について、後に公開された採点表で、ポーランド人の審査員勢がみんな高評価をしていることが印象に残りました。なかでもパレチニ審査員にはお話を聞くことができたので、またご紹介します。すごい褒めっぷりです。

★ガラコン会場で販売される、ジャパン・アーツ公式プログラム冊子や、
下記サイトもあわせてご覧ください。もう少し真面目です。
ジャパン・アーツHP ケイト・リウ インタビュー

[家庭画報 2016年1月号 Kindle版]