ようやく、楽器の話題を。
少し前に、デリーの楽器店街に行ってきました。
案内してくださったのは、カシオ・インディアの中正男社長。
カシオはインドで、まず腕時計のG-SHOCKをヒットさせ
(ボリウッドのスターが着用するなどして一気に流行ったそう)、
続いて、インド人が使い慣れている桁数の区切りを取り入れた電卓、
インド音階などを取り入れたキーボードで大成功しているそうです。
電子ピアノのことをインドの人は「カシオ」と呼ぶという話も聞きます。すごいことですね!
(昨年11月の東洋経済オンラインの記事が詳しいですので、ご参照ください)
中社長は、インド駐在が今回で3度目。
最初の駐在は1996年のことで、これまでの駐在期間は合計12年になるそうです。
なんだかとてもいい声でヒンディー語をお話しになり、
もう、登場された瞬間からインドな気配が漂っていました。
最近カシオは、ボリウッド映画音楽の大家
A.R.ラフマーン氏をイメージキャラクターに起用しているそうで、
お店の看板にも大きくその姿が見られます。
そしてこちらがインド文化対応のミニキーボード。
ハルモニウム(左手でパフパフ空気を吹き込みながら右手で鍵盤を弾くインドの楽器)と
同じサイズのもので、よく売れているそうです。
右上に、持ち運びやすいくぼみ付き!という表示がありますが、
通常、パフパフするはずの左手が手持ちぶさたになるので、ここを握って弾く人もいるとか。
ちなみに、ハルモニウムとはこんな楽器(件のパフォーマーのコロニーにて撮影)。
インドでよく売れるのはやはり電子ピアノということで、
アコースティックのピアノは、まだまだこれから、という状況だそうです。
そんな中、気になるお店が。
なんとインドに「PIANO WORLD」ですと!
(見にくいですが、手前のオヤジではなく、奥の看板にご注目ください。O、とれてるけど)
カワイの代理店だそうです。
音楽教室も併設しているらしく、入口にはこんな看板が。
“ミュージック・フォー・リトル・モーツァルト”とあります。
この近所の住民でモーツァルトがなんなのか理解している人は
おそらく、あまりいないと思われますが。
広い店内には美しいグランドピアノがずらり!
ひときわ目をひく白いグランドピアノの中には、除湿剤が放り込まれていました。
以前、とある日本企業でインド駐在のアマチュアヴィオラ奏者の方が、
デリーの雨季の湿度はものすごく、楽器がおかしくなったので帰ったら直そうと思ったら、
日本に持ちかえっただけで直った…と言っていたことがありましたが、
それほど、こちらの気候はアコースティック楽器には過酷です。
楽器店の方に、グランドピアノを購入する方に
どんなケアをするようアドバイスしているのですかと尋ねると、
「特別なことは必要ありません!
なぜならカワイのピアノのアクションの素材は、カーボンファイバーの入ったABS樹脂の…」
とプレゼンテーションが始まったので、知ってるから結構ですと遠慮しておきました。
インドまで来て、まさかウルトラ・レスポンシブ・アクション的な説明を聞くことになろうとは!
日本企業の世界にゆきわたる見事なディーラー教育(?)、
そしてインド人販売員の素直で従順な精神を見た気がしました。
インド人というと、一般には
時間にルーズで大ざっぱ、自己中だったりするというイメージがあると思いますが、
同時にものすごくせっかちで、手先が器用で細かく、とても素直という一面もあります。
そうした感性がどうやって共存できるのか。…ミステリーです。
が、そんな日本人や日本企業が思いもよらない感覚を活かしたことが、
カシオのインド戦略成功の秘訣だったのだろうなと思います。
ヒンディー語をペラペラ話してインドに溶け込む中社長や日本人の社員の方を見て、
そんなことを思った、楽器店街訪問のひとときでした。