ベートーヴェンはインドの思想に大きな影響を受けていて、
日記やスケッチ帳には、インド思想からの引用やインド音階のメモが数多く残されています。
ベートーヴェンのメモを集めた書籍、「音楽ノート」を読んでいると、
二言目にはインドインドと出てきて、
この人本当にインドに興味あったんだろうなぁ~と感じます。
この前、3月に他界したアーノンクールとウィーン・コンツェルトゥス・ムジクスによる
ベートーヴェンの「運命」を聴いていたら(アーノンクールのラスト・レコーディングとなった盤)、
急に最後に、インド古典音楽な気配ムンムンのフレーズが出てきてびっくりしました。
他の演奏ではそんなことを思ったことがなかったのですが、
さすがアーノンクール先生、その部分をクッキリ鳴らしていたため耳についたようです。
さっそくサントゥール奏者の新井君に聞いてみたところ、
新井君がよく来日公演で演奏しているラーガ(特定の音列)に
似たものがあるとのこと(厳密には違うらしいけど)。
きっとベートーヴェン、このラーガをノートにメモってたいに違いないと推測。
ところでみなさんお気づきの通り、私はインド古典音楽には詳しくありません。
運良く、ユザーン、新井君それぞれの師匠である人間国宝級の演奏家
ザキール・フセイン氏やシヴ・クマール・シャルマー氏などを
生で聴く経験だけはしていますが、
(ピアノでいえば、ホロヴィッツやルービンシュタインを生で聴いたというような感じかなぁ)
まあ、豚に真珠状態かもしれません。
でもブタちゃんなりに本物の真珠の質感には、一応触ったということで。
しかし、私も全然良くわからないながら、
少し前に来日していたウスタッド・シュジャート・カーン氏の歌声を聴いたときは
なぜか涙が出そうになりましたし、
去年ザキール・フセイン氏のタブラソロ公演を聴いたときは、
興奮しすぎてやばかったです。目から星が飛び出しそうでした。
何かを越えている音楽は、こちらが受け取ろうとさえすれば、
すごいものが伝わってくるものなんだなと実感する瞬間です。
さらに、インド音楽をちょこちょこ聴くようになって、
西洋クラシックの演奏の感じ方も、少し変わってきたというか、
より耳と感覚を開いて聞くようになったような気がしないでもありません。
クラシック関係の人にも、インド音楽超大好きという方に時々遭遇するので、
わりと関心があるという方も多いのだろうと思いますが、
やっぱり、ピアノファンの多くのみなさんにとって、
インド音楽はなじみがなくてわかりにくいという印象があるかもしれませんね。
でも、とにかく聴いてみてほしいです!
ところで、新井孝弘君とユザーン君という二人については、
感性、音楽に向かう姿勢、普通の人間とは完全に違う思考回路、
そしてそれが集約して生まれる音楽がとにかくおもしろくて、
こういう人が日本人にいるって本当にすごいことだなと思っています。
ユザーン君については、みなさんテレビ等での活躍もご存じのことでしょう。
昨秋まで放送されていたヨルタモリで、不思議なトーンのトークをかましつつ、
セッションになると、一転熱いタブラプレイを繰り広げる。
タモさんもビックリ!
このまえ某ジャズピアニストさんが、本物の天才ジャズミュージシャンは、
ライブセッションの中でリズムをずらす演奏をどんなに長らく続けていったあとでも
(説明が雑すぎてすみません…)
必ずまた、ピタッと1拍目をとることができる、という話をしていましたが、
まあ、ユザーン君のような人は余裕でそういう感じなんだろうなと
そのとき思いながら話を聞いていました。
インド音楽のリズムの語法に比べたら、
西洋クラシックやジャズのリズムの理論なんて、かなり若いですよね、たぶん。
古いからすごい、というつもりはありませんが、
インドのリズムの複雑さと奥深さがハンパないのは確か。
ユザーン君の場合はそれをインド音楽以外の分野でも輝かせていて、
しかもお話をさせても文を書かせても大変おもしろいという、稀有な才能です。
そして新井孝弘君については、
ものすごい人間国宝の先生に内弟子のような立場でついて勉強している
激レアな日本人音楽家だということが、
シタール奏者のヨシダダイキチさんの記事などでしっかり説明されています。
(新井君、日本に戻ってきて本当にホームシックみたい。つまり、インドに帰りたい)
ピアノファン(そして調律関係者のみなさん)にまず注目していただきたいのは、
このピアノのご先祖「サントゥール」の、超長い調律タイム。
ユザーンが軽妙なトークを繰り広げている間、
新井君は次の曲の演奏に合わせて100本の弦を黙々と調律します。
最近の楽器では、弦はピアノの弦を使っているそうで、
新井君が前日本にきたとき、
「ドイツ製のいい弦はインドで買えないから買いたい。
誰か調律師の友達にどこで買えるか聞いて」と言われたことを思い出します。
(というか、日本に来るとよくそう言っているような気がする)
でも、私のまわりのメーカー所属調律師さんは自分で弦を買いにいかないですからね…
というわけで、そのときはお役に立てずでありました。
そして、この弦を、ハンマーではなくクルミの木の撥で叩くという。
こんな感じの楽器です。(昨年ムンバイで撮影)
一つ叩くと全部共鳴するので、とても繊細で神秘的な音がします。
そんな新井君の、ライブに寄せてのコメント動画がありますのでご覧ください。
最後に少し昨年のライブからの映像も入っていますので、
サントゥールとタブラはどんな音がするのか、ちょっと聴いてみてくださいね。
ライブ当日は、ユザーンが聞き手の新井君への質問コーナーもあり、
さらにはパルーおばさんという新井君の知り合いのおばさん特製ブレンドの、
かなり珍しい味のチャイも販売されます。
ユザーン君いわく、パルーおばさんはものすごいお金持ちで、
おばさんの家で出される料理はめちゃくちゃおいしいので、チャイにも期待できるだろうとのこと。
音楽はもちろん、トーク、変わったチャイも楽しめますので、
ぜひ遊びに来てください!
インド音楽のライブ会場なんてアウェ~感あるなとお思いの方もご心配なく。
もれなく、わたくしがおりますゆえ。
東京以外にお住まいの方、
そのほかの各地でも開催されますので、ユザーン君のHPをごらんください。
(ちなみにユザーン君のHP、Q&Aコーナーが絶品ですのでぜひのぞいてみてね)
◆2016 年4月14日(木) 19:30 開演(18:30 開場)
会場:Star Pine’s Cafe(吉祥寺)
[料金] 3,300円+1drink
[予約] Star Pine’s Cafeホームページのフォームよりご予約ください。
または、Star Pine’s Cafe 店頭でもチケット購入できます。
当日会場でお待ちしています。楽しいよ。