第16回「また会う日まで」


いよいよ今回でモニターレッスン最終回。とはいえ、今後も続ける気満々なのだから、コロムビアの戦略は正しいと言わざるを得ない。一度体験レッスンを受けてしまったら、その面白さに魅了されて、「これで終わり!」とは言えないのだ。

最後ということもあって、つっかえずに弾こうと気合いを入れたのが間違いだったのか、いつもと同じような感じになってしまった。それでも、ここに来たときと比べると、随分弾けるようになったなあと自己満足の世界に突入する。楽譜を見ないで弾けるようになるとは予想もしなかった。
『北の国から』は、何となく弾ける感じになったのだが、問題はペダルだった。これまでほとんど使ったことがないから、どのタイミングで踏めばいいのか分からない。ドレミ先生は、「音が濁らないように踏めば大丈夫! 感覚よ、感覚!」と言うのだが、踏むタイミングが決まっていないとなると、それはそれで難しい。結局、恐る恐る踏んで離しての繰り返しになってしまった。『北の国から』って、こんな感じだったっけ?
「そうしたら、最初の音を弾いた後に踏んでください。1音ずらして踏むのがポイントです」
そう言って、「ここで踏む」というマークをつけてくれたのだが、1音ずらすとなると、やっぱり、これはこれで難しい。どのパターンでも難しいということか……。

これからも続けたい意向は伝えていたので、一通りレッスンが終わると次回曲の選別に入る。相変わらず、僕の面倒なリクエスト――誰もが知っていて、停電が起きたバーで弾くと格好よくて、そんなに難しくない曲。考えてみると、とんでもない要求だ――に当てはまる曲をいくつか弾いてくれる。
その中でも、「これは!」と思ったのは、「ロミオとジュリエット」の曲。ソフトバンクのCMで出て来るやつだ。暗闇で弾いたら怖いかもしれないけど、これを弾けたら、「なかなかやるな」と思わせることができそうだ(誰に?)。
とりあえず、この曲を第一候補として、次回、ここに来た時に、他の候補曲を選んでもらうことにした。ここでの選曲は、思いっきり、やる気に繋がるので重要だ。3、4カ月は、その曲と格闘することになるのだから……。

その後、コロムビアのMさんを交えて、今後のスケジュールについて話す。これから秋にかけて、仕事が立て込んでくるので、週一ペースでのレッスンはほぼ絶望的だ。そのため、できれば隔週にしてもらえるといいんだけど……。ただ、他の生徒さんのスケジュールなどもあるので、一人だけ変則的なことは難しいようだ。それはそうだろうな。
そこで、とりあえず続けることは前提にしておきながら、少し仕事が落ち着いた頃に、改めて時間を決めることにした。ドレミ先生も、「せっかくここまで来たんだから、ここで止めちゃうのはもったいないよ」と言ってくれる。何度も言うが、止める気は毛頭ないので次回を約束してサヨナラだ。もちろん、候補曲をいくつか選んでくれるように念押しするのは忘れない。

帰り道、これで来週のレッスンに向けて練習することもないのかと思うと、一抹の淋しさに襲われる。ドレミ先生に言ったら、「レッスンがなくても弾きなさい!」と突っ込まれるんだろうなあ。
それにしても、小学校時代に言われるがままに弾いていただけだったのが、大人になって考えながら弾くようになると、ピアノの楽しさがまったく違う。この年で新たな趣味に出会うとは思わなかったなあ。何でも小さいときにやっておくと、将来に繋がるよっていう教訓か?

さあ、ドレミ先生との再会を思いつつ、娘の前で弾いてみるか。

(おわり)

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◇レポート執筆者◇
今東昌之
めがねがトレードマークの会社員。
小学校3年から中学2年、インターバルを挟んで、高1から高2までピアノを習うも、
現在はさっぱり弾けなくなってしまったという。
40歳を過ぎたある日、再びピアノを始めようと一念発起。さあ、どうなる!

◇通ってみた音楽教室◇
コロムビア音楽教室
2013年にオープンしたばかり。ご存知のレコード会社日本コロムビアが運営する音楽教室。代々木公園駅近く、白寿ホールのある建物のなかで火曜日から土曜日まで開校。初心者から音大受験生まで、演奏家としても活動する講師たちにマン・ツー・マンで習うことができる。ピアノのほか、ヴァイオリン、チェロ、フルートのクラスがある。

ホームページ http://www.columbiamusicschool.jp/